真島ヒロは、新人時代、描きたい場面を先に考え、その場面に向けて話を組み立てていました。
ただ、作者が見せたい大ゴマがあっても、読者の気持ちがそこまでついてくるとは限りません。
編集者との打ち合わせでは、見せ場へ自然に入っていける流れを考えていたといいます。
本人の回想には、思いついた場面を、読者が楽しめる漫画にしていく仕事が表れています。

見せたい大ゴマの前に、読者の気持ちを考える
2018年の本人インタビューで、真島は、見せたい場面が先にあり、その場面を描くために話を作っていたと説明しています。
そこで編集者と話したのは、どんな展開があれば、大ゴマに向けて読者の気分が盛り上がるかということでした。
真島が挙げたのは、見せたい場面を優先するあまり、前後の話が合わなくなる問題です。
読者がその場面に入り込める流れまで、考える必要があったのです。
真島は、描きたい場面を面白くするほど、読者の目線を意識する必要を感じたと振り返っています。
ハルの旅立ちは、第1話から第4話になった
読者に合わせて話の進み方を変えた具体例が、『RAVE』の冒頭です。
最初のネームでは、ハルは第1話で旅立っていました。
担当編集者は、当時のマガジンの読者には速すぎると指摘します。
何度も描き直し、旅立ちは第4話になりました。

真島は2021年の回想で、当時の読者にじっくり読んでもらうための変更だったと説明しています。
この旅立ちの調整は、『RAVE』の結末の構想を扱った記事でも紹介しています。
場面が変わる時は、前の場面に手掛かりを置く
場面を切り替える時にも、真島は前後のつながりを考えています。
2021年の新人への回答では、同じ言葉や感情、似た形を使って場面をつなぐ方法を挙げました。
例えば、別の場所で人物の名前を出してから、その人物の場面へ移るという方法です。
『EDENS ZERO』では、拳と銃による別々の戦いを、同じ言葉でつないでいます。
拳で攻撃する場面と銃を撃つ場面に、同じ台詞がまたがっています。
読者は一つの言葉を追いながら、別の戦況へ目を移せるのです。

回想に入る際も、真島は読者が過去を知りたくなったところで始めたいと説明しています。
説明を始める前に、その話を読みたいと思うきっかけを作るという考えです。
大きな攻撃は、受けた人物の反応でも伝える
見せ場で何が起きたかを伝える時も、台詞だけが手段ではありません。
真島は同じ回答で、戦闘中の説明口調を避け、人物の感情や表情で状況が分かる描き方を理想として挙げています。
どれほど痛がっているかという顔も、読者に攻撃を伝える手掛かりになります。

『EDENS ZERO』の公開例では、拳の大ゴマに加え、重さに驚く顔や、重いとつぶやくコマが描かれます。
一撃の大きさと、その一撃を受けた反応を組み合わせて、重さを見せています。
まとめ
真島の回想では、見せたい場面を面白くすることと、読者の目線を考えることが結びついています。
大ゴマへ至る流れを作り、場面の切り替わりに手掛かりを置き、攻撃の後には人物の反応を見せる。
一つの見せ場のために、その前後にも描くべきことがあるのです。
印象に残った大ゴマを読み返す時、前後のコマにも目を向けると、真島が読者を引き込む工夫を楽しめます。

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