光山が救出ボタンを押さず、チャンとマリオを見殺しにしようとした時、和也は自分の予想が当たったと喜ぶ。
人間は追い詰められれば仲間を裏切る。
和也は三人の「救出」ゲームを、その証拠にしたかった。
だが、三人の間に疑いが広がる前に、和也自身がゲームへ手を加えている。
和也が見たのは、もともとあった裏切りなのか。
それとも、自分で生んだ疑いの行き着く先だったのか。

光山の遅れは、裏切りではなかった
三人は、選ばれた救出者が席を離れてボタンを押せば、残る二人を助けられる。
序盤の三人は、救出者が分かると声を掛け合い、協力して回を重ねていた。
和也はそこで、救出者になった光山のベルトを一時的に外れなくする。
光山は席を離れたくても離れられず、チャンとマリオには、光山がなかなか助けに来ないように見える。

この仕掛けが残酷なのは、三人が同じ場面について別々の情報を持たされることだ。
光山は、自分が脱出を試みたと知っている。
チャンとマリオは、その手元を見られない。
二人に分かるのは、救出が遅れたという結果だけだ。
光山が事情を説明しても、仲間には、それが本当か確かめられない。
この回で光山に向けられた疑いは、光山の裏切りではなく、和也が隠して行った細工から生じた。
同じ疑いの中でも、三人の選択は分かれた
和也の細工は、三人をすぐには崩せなかった。
第12回戦でチャンは二人を助け、第14回戦ではマリオも恐怖に迷いながら救出ボタンを押す。
二人にも、自分だけ生き残り、大金を取る道はあった。
それでも二人は、光山を含む仲間を助けた。

第15回戦で救出者になった光山は、ボタンを押さない。
光山は、次にチャンが救出者になったら自分を助けてくれるのか、疑いを口にする。
和也は光山に考える時間を追加で与え、光山はチャンの訴えを聞いた後も、救出を拒む。
和也の細工は三人の信頼を揺らした。
その中で、チャンとマリオを助けないと決めたのは光山自身だ。

和也が欲しかった答えは、三人の結果と合わない
光山の裏切りを見て、和也は人間の本性を言い当てたつもりになる。
しかし、同じゲームでチャンとマリオは救出を選んでいる。
和也は三人の行動を見ながら、自分に都合のよい光山の選択だけを、人間一般の答えにしてしまう。
光山の行動を、和也のせいだけで片づけることもできない。
ゲームの後、光山はチャンとマリオと再会しても、裏切りで得た約七千万円を自分のものだと主張する。
光山は二人に百万円の札束を差し出すが、残りの大金は持ち続けようとする。
光山には、和也の細工だけでは説明できない金への執着もある。
それでも、光山は初めから仲間を見殺しにしていたわけではなかった。


和也は、光山が救出を遅らせたように見える場面を作った。
その後、光山は本当に救出しなかった。
この二つを続けて読むと、救出ゲームの恐ろしさがはっきりする。
和也が作った「裏切りに見える出来事」は、三人の間に疑いを残した。
最後には光山自身が仲間を疑い、救出を拒む理由としてその不信を口にする。
和也が確かめたのは、手つかずの「人間の本性」ではない。
自分が揺らした信頼の中で、三人がそれぞれ何を選ぶかだった。


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