岩明均さんの漫画の怖さには、体の異様な形と、コマをつなぐ見せ方が関わっています。
『七夕の国』では、武士の体が削られていく途中の動きを描かず、次のコマではすでに、体の欠けた範囲が広がっています。
読者は何が起きたのかを考えながら、その変化を見ることになります。
異様な姿と、コマを読む順序の両方がある
『寄生獣』のミギーは、目や口、刃物のような部分を組み合わせた姿で描かれます。
人の体が、普段の形を保ったままではなくなる描写も、この作品の強い印象を作っています。
『寄生獣』の怖さには、そうした体の形そのものの異様さが関わっています。
一方、漫画では、どのコマの後にその姿を見るかも大切です。
一枚の絵を眺めるときと、人物の動きや会話を追い、次のコマで変化した姿を見るときでは、受け取り方が違います。
『七夕の国』の第1話には、そのコマのつながりを確かめやすい場面があります。
削られる途中を描かず、変わった体を見せる

上のコマでは、すでに武士の頭の一部が失われています。
下のコマへ目を移すと、体の欠けた範囲はさらに広がっています。
この二コマの間には、体が削られていく途中の動きが描かれていません。
読者は、すでに起きた変化を見せられます。
二コマとも、武士の顔と上半身を捉えています。
同じ人物を続けて見ることで、体のどこが変わったのかを追いやすくなっています。
『チ。―地球の運動について―』の作者・魚豊さんは、2024年のインタビューで、『七夕の国』の能力の見せ方を、映画の「ジャンプカット」にたとえています。
途中の動作を省き、結果を見せる場面へ移るような描写です。
魚豊さんは、そのコマの飛躍が読者の想像を誘う点に注目していました。
まとめ
ミギーの異様な形が印象に残ることと、武士の体の変化をコマの間で追うこと。
岩明作品の絵を読む楽しさには、その両方があります。
『七夕の国』の二コマは、変わった姿を見せると同時に、描かれていない途中の出来事を読者へ想像させます。
目に見える身体の異様さと、読む側が補う怖さが結び付くところに、この見せ方の面白さがあります。




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