『漫画家本vol.6 あだち充本』は、あだち充さんの長い仕事を、本人のインタビュー、担当編集者の証言、作品の年表や書誌からたどれる一冊です。
中心になるのは、計20時間に及ぶ本人へのインタビュー。
『タッチ』の制作秘話から知りたい人にも、代表作以前の仕事をたどりたい人にも、読む手がかりが用意されています。

20時間のインタビューは、上京した頃の話から始まる
小学館の公式案内によると、本書は2018年刊行、A5判・226ページです。
インタビューの扉には、あだちさんが上京して住んだ街を歩きながら、1年間にわたって全7回の取材を重ねたとあります。
取材時間の長さに加え、本人の足跡をたどりながら話を聞いている点も、この企画の特徴です。

公式試し読みで公開されている冒頭では、あだちさんは1969年に高校を卒業して上京した頃を振り返っています。
駒場東大前の漫画喫茶へ通い、店のスケッチブックに描いた絵が月末の審査で選ばれると、コーヒー券をもらえたという話も出てきます。
後の代表作の誕生だけを知るのとは、少し違う面白さがあります。
漫画を読む場所に集まり、絵を描いていた18歳の頃の暮らしから、漫画家としての歩みをたどれるからです。
『タッチ』の和也の死についても、本人が構想を語る
本書のインタビューには、『タッチ』で和也が亡くなる展開を、早い段階から決めていたという本人の回想があります。
あだちさんは、担当編集者以外のほとんどが反対していたこと、その出来事を物語の出発点と考えていたことも語っています。

読み終えた作品の場面を思い出しながら、作者がどこを物語の出発点に置いていたのかを確かめられるのも、本書を手に取る楽しみです。
和也の死をめぐる本人の回想は、別の記事でも紹介しています。
担当編集者の話や年表で、作品同士のつながりをたどる
収録されているのは、本人のインタビューだけではありません。
歴代担当編集者のインタビューのほか、伊集院光さん、大泉洋さん、菊池亜希子さんとの対談もあります。
仕事を共にした人の証言や、作品を読んできた人との会話を通しても、あだちさんの仕事に触れられます。
作品を順に追いたい人には、オリジナル単行本のギャラリーや、年表、単行本・文庫の目録が手がかりになります。
『タッチ』を描く以前の仕事へ戻ったり、読んだことのない作品を探したりするときにも役立つ内容です。
ヒロインのカラーイラストや漫画の名場面も収録されており、話を読むだけでなく、絵や場面から作品を思い出せる企画も用意されています。
2018年に刊行された本なので、年表や作品目録も、その時点までの歩みを知るためのものです。
まとめ
『タッチ』の制作秘話から入り、上京したばかりの頃の話へさかのぼる。
あるいは年表を眺めて、未読の作品に気づく。
本人の長い回想と、作品を探すための目録が一冊にあることで、好きな一作から、あだち充という漫画家の仕事全体へ関心を広げられます。
代表作を読んだ後に、その作者をもっと知りたくなった人に向いた本です。


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