『幽☆遊☆白書』幽助はなぜ神谷を殺すことをためらったのか

医師の領域能力を示す神谷実の原作コマ 幽☆遊☆白書
冨樫義博『幽☆遊☆白書』第14巻/集英社

幽助は神谷より強い。
それでも病院での戦いは、力の差だけでは終わらなかった。
神谷の能力で広がるウイルスを止めるには、神谷自身を止めなければならない。
幽助がためらったのは、目の前の敵を倒せるかではなく、人間の命を自分の手で奪うのかという判断だった。

人間を倒さずに済んだ、以前の戦い

幽助は暗黒武術会でも人間と戦っている。
Dr.イチガキに操られた三人の武道家だ。
彼らは病気の師を助けるためにイチガキへ身を差し出し、意思に反して戦わされていた。
そのため幽助たちは、対戦相手を止めると同時に、彼らを救う道も探さなければならなかった。

幻海は光浄裁で三人を支配から解放する。
人間の対戦相手を殺さずに戦いを終える方法が、そこで見つかった。

光浄裁を説明する幻海
冨樫義博『幽☆遊☆白書』第8巻(集英社、部分)。

神谷戦でも幽助の前に人間が立つ。
ただし今度の神谷は、誰かに操られた被害者ではない。
自分の意思で病院にウイルスを放ち、患者や仲間の命を脅かしている。
前の戦いと同じように、まず相手を救えば終わる状況ではなかった。

神谷を倒せても、ウイルスは止まらない

神谷は医師であり、人の体を傷つける能力とウイルスを作る能力を持つ。
幽助は霊丸で神谷の腕を吹き飛ばすが、神谷は自分の体を処置し、痛みも抑えて戦い続ける。

医師の能力を持つ神谷
冨樫義博『幽☆遊☆白書』第14巻(集英社、部分)。

感染した人々には時間がない。
幽助にとって問題なのは、神谷との殴り合いに勝てるかどうかではなく、神谷の領域をどう終わらせるかだ。
神谷が気絶も降参もしない以上、幽助には殺すという選択が迫ってくる。

ウイルスの危険を告げる神谷
冨樫義博『幽☆遊☆白書』第14巻(集英社、部分)。

神谷自身も幽助のためらいを見抜いている。
人質を取った神谷は、これで自分を殺せない理由ができたと幽助を挑発する。
神谷は幽助より強いから追い詰めたのではない。
病院の人々の命と、幽助が人を殺したくない気持ちを、自分が逃げるために使っている。

幻海が救ったのは、幽助のその後だった

神谷が捕まえた看護師は、柳沢が変装した姿だった。
柳沢が正体を明かし、神谷は人質を失う。
神谷は最後に、血清があるかのように装ってまで生き延びようとする。
その嘘も見破られ、幽助は神谷を殴り倒す。
神谷の心臓が止まり、病院の人々を襲っていた症状は消える。
幽助は、ためらいながらも人を守るために神谷の命を奪う決断をした。

幻海はその後、神谷を蘇生する。
幻海は幽助に、この男の命を背負う必要はないと告げる。
神谷が助かったからといって、幽助が何も選ばずに済んだわけではない。
幽助は自分の手で神谷を止め、幻海は幽助が人を殺した結果まで抱え続けずに済むようにした。

イチガキ戦で幻海は、操られた人間を救った。
神谷戦では、手を下した幽助を救うために神谷を生き返らせた。
幽助の力が増しても、人間を相手にした戦いの結末を腕力だけで決められるわけではない。
同じ師弟が、以前とは違う方法で人の命に向き合うところに、神谷戦の重さがある。

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