仙水を止めるため、コエンマは長年ためてきた霊力を魔封環から解き放とうとしていた。
ところが洞窟で命を落とした天沼を見つけると、その力を使って少年を生き返らせる。
仙水との対決を控えたコエンマが、なぜ先に天沼を救ったのか。
コエンマは後に、仙水を霊界探偵に任じた自分の責任を口にする。
この言葉を踏まえると、天沼の救出にも、かつての部下が起こした事件を人任せにしないコエンマの姿が見える。
仙水は、天沼が死ぬところまで利用した
天沼は、自分の「領域」で再現したゲームの敗北が、自分の死につながると知らなかった。
その事実を知っていた仙水は、幽助たちを足止めするために天沼を洞窟へ置いた。
天沼は仙水を信じ、自分の得意なゲームで幽助たちを迎え撃つ。

蔵馬はゲームに勝って先へ進むが、天沼は命を落とす。

コエンマはこの時点で、仙水を止めに洞窟へ入っていた。
魔界への穴が開くのを防ぐため、必要なら魔封環を使うつもりだった。
それでもコエンマは途中で天沼を蘇生する。
後にコエンマ自身が、蘇生に魔封環の霊力を消費したと説明する。
しかも仙水は、その消耗まで計算に入れていた。
仙水が利用したのは天沼の能力だけではない。
死んだ少年を見つければコエンマが救うことも、計画に組み込んでいたのだ。
コエンマが引き受けた「任じた責任」
コエンマが仙水と向き合う場面には、天沼の救出を考える手がかりがある。
コエンマは、仙水を霊界探偵に任じたのは自分だと語り、仙水と共に魔界へ取り込まれる覚悟まで示す。
仙水を止めることを、幽助たちに任せきりにするつもりはなかった。

天沼を生き返らせた理由を、コエンマが直接語る場面はない。
ただ、天沼の死は、かつてコエンマが任じた仙水の計画によって起きている。
仙水への責任を引き受けようとするコエンマが、その計画で命を奪われた少年を見過ごせなかった、と読むことはできる。
天沼は、死ぬ危険を知らされないまま利用された少年でもある。
仙水の仲間として幽助たちを足止めした天沼も、コエンマは生き返らせた。
蔵馬とコエンマは、違う時点で天沼に向き合った
蔵馬は天沼に勝ち、コエンマは天沼を救った。
二人は同じ場面で「殺すか救うか」を選んだわけではない。
蔵馬が向き合ったのは、天沼の領域から出て仙水のもとへ進むためのゲームだった。
天沼に勝てば少年が死ぬと分かっていても、蔵馬は勝負を終わらせる必要があった。

コエンマが通ったのは、その後だ。
天沼の死を前にして、コエンマには蘇生の術があった。
コエンマが天沼を救えたことで、蔵馬の葛藤が軽くなるわけではない。
蔵馬には洞窟を進む役目があり、コエンマには死んだ天沼を救う手段があった。
仙水はこの二人の行動をつなぎ、天沼の死をコエンマの霊力を削る仕掛けにした。
天沼を救った力は、仙水には残らなかった
天沼の蘇生で魔封環の霊力が減ったことは、後の場面で別の意味を持つ。
コエンマは、将来の暗黒期に備えて霊力をためた魔封環を、仙水を封じるために使おうとしていた。

仙水が倒れたとき、コエンマは、魔封環に力が残っていれば仙水を治療できたと話す。
だが、その力は天沼の蘇生にも使われ、仙水との戦いでも失われていた。
天沼を救わなければ仙水を封じられた、とまでは言えない。
魔封環による封印は、仙水の聖光気に破られている。
確かに言えるのは、コエンマが天沼を救うために切り札の一部を使い、仙水の計算どおりに力を減らしたことだ。
それでもコエンマは、仙水との対決をやめなかった。
天沼の命を救うことと、仙水が始めた計画を止めることを、どちらも自分の仕事として引き受けていたのだろう。
仙水はコエンマのその行動を読み、天沼を罠にした。
コエンマの選択をたどると、この罠の残酷さは、少年を死なせたことだけでなく、少年を救おうとする側の力まで利用したことにあると分かる。


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