『忍空』はなぜ戦争が終わった後から始まるのか

『NINKU―忍空―』第1巻の表紙。風助が描かれている 忍空
『NINKU―忍空―』第1巻/桐山光侍・集英社

『忍空』の第1話は、戦争が終わって三年たった世界から始まる。
国は「平和」になったが、風助が訪れた農家は、忍空組を名乗る男たちに脅かされている。
しかも、風助が最初に倒す男たちは本物の忍空使いではない。
この始まり方には、戦争で名を上げた力が、その後の人々の暮らしに何を残したかが表れている。

戦争は終わっても、農家の暮らしは脅かされている

第1話の冒頭は、天下分け目の戦いを経て、平和な時代が来たと告げる。
その直後に出会うのは、戦争の傷を抱えた家族だ。
一家の娘は、母親が兵士に撃たれるところを見て以来、声を出せなくなった。
風助自身も戦争で両親を失っている。

風助はおばあさんの薬を買うために都へ向かう途中で、この家族に出会う。
忍空は戦争を終わらせた。
だが、風助が第1話で忍空を使う相手は軍隊ではなく、農家を襲う男たちだ。
戦争が終わった後も暮らしを脅かす者を止めることが、風助の最初の戦いになる。

「忍空」の名を借りた者から、風助が守ったもの

農家を襲う男たちは、かつて戦争を終わらせた忍空組の残党を名乗る。
家族にとって「忍空」は、英雄の名であると同時に、逆らえない相手の名にもなっている。
ところが風助は、襲撃者に向かって、おまえたちは忍空使いではないと言い切る。
風助は本物の忍空組一番隊長だ。
風助は家族を守るために忍空を使い、偽者を退ける。

忍空組を名乗る偽者に風助が立ち向かう第1話の原作コマ
『NINKU―忍空―』第1話/桐山光侍・集英社
風助が偽者に忍空使いではないと告げ、元一番隊隊長と名乗る第1話の原作コマ
『NINKU―忍空―』第1話/桐山光侍・集英社

別れ際、家族は風助に礼を言う。
忍空組を名乗る男たちを恐れていた家族が、忍空使いの風助には感謝して別れる。
第1話は、敵を倒すだけでなく、その家族にとって「忍空」の意味が変わるところまで描いている。

偽者を倒しても、戦後の問題は終わらない

第1話は偽者を倒して終わる。
しかし、後に風助が向き合うのは、戦争で親を失った子どもたちの施設を脅かす、本物の元忍空組隊員だ。
さらに、かつて同じ戦いに加わった者たちが忍空狼として現れ、風助たちと対立する。
人々を傷つける者が偽者に限らない以上、忍空の名や経歴だけでは、その力を誰のために使うか決まらない。

風助も忍空狼の元隊員も、戦争を生き抜いた忍空使いだ。
それでも風助は農家や孤児院の人々を守り、忍空狼は人々を脅かす。
違いは戦時中の功績ではなく、戦後の行動に表れている。
第1話で風助が農家を助けたことが、後の元隊員との対立にもつながっていく。
忍空狼との対立は、やがて第二次忍空戦争へ広がる。

忍空狼との対立が広がる『NINKU―忍空―』第3巻の表紙
『NINKU―忍空―』第3巻/桐山光侍・集英社

終戦の後に始まる旅だからこそ

第二次忍空戦争が終わると、干支忍たちはそれぞれの暮らしへ戻る。
ところが風助たちは、かつての戦争を生き延びた「コマンドアーマー」と出会う。
二度目の戦いの後にも、昔の戦争の暴力が人々の生活へ入り込んでくる。

第二次忍空戦争後の出来事を収録する『NINKU―忍空―』第4巻の表紙
『NINKU―忍空―』第4巻/桐山光侍・集英社

風助の旅が最初の戦争の後から始まることで、勝利を描くだけでは届かない人々の暮らしが見えてくる。
忍空が戦争を終わらせた力だったとしても、それだけで家族が安心して暮らせるわけではない。
風助は、かつての仲間と同じ力を持ちながら、その力を目の前の人を守るために使う。
戦争が終わった後にこそ、その違いが問われる。

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