剣心が京都へ発った後、恵は薫に高荷家の傷薬を渡そうとする。
恵自身は剣心を追わず、東京に残る。
恵も剣心を大切に思っているのに、なぜ薫を送り出すのか。
恵には医者として診ている患者がいる。
その仕事を続けながら剣心を助けるために、恵は薬を薫に託した。
だが薫が京都へ行くと決めるには、薬より先に、剣心との別れを受け止める必要があった。
恵が東京を離れなかった理由
恵はかつて武田観柳のもとで阿片を作らされ、命を絶とうとしたこともある。
剣心に救われた後、恵は医者として人を助ける道を選んだ。
剣心が京都へ行ったと知っても、恵は東京の患者を置いて後を追うことを選ばない。
剣心への思いがなくなったからではなく、目の前の患者を診ることが、恵自身の生き方になっていたからだ。
恵は剣心の無事を願い、高荷家の傷薬を薫に持たせようとする。
自分が京都へ行けないなら、何もできないと諦めたわけではない。
医者として残る判断と、剣心を助けたい気持ちを、恵は別々の行動にした。
「さよなら」をめぐる二人の痛み
剣心は旅立つ前、薫にだけ別れを告げた。
薫は剣心の言葉を受け止めきれず、道場に閉じこもっていた。

恵が傷薬を渡そうとしても、薫は恵が自分で剣心に届ければいいと返す。
薫は、恵が患者のために残ることまで、剣心への思いの弱さと受け取ってしまう。
恵もまた、剣心から別れを告げられなかった一人だった。
恵は薫に、それは「お互い様」だと返し、自分の寂しさを正面から伝える。
薫だけが剣心との別れに傷ついているのではない。
恵も傷ついたうえで、患者のいる東京に残ると決めていた。

京都へ向かうと決めたのは薫自身
恵の言葉を聞いた薫に、弥彦は剣心に会いたくないのかと問う。
薫は剣心に会いたいという自分の気持ちを口にして、京都へ行く。
恵は自分もつらいと明かし、剣心のための薬を渡した。
弥彦の問いを受けて旅立ちを決めるのは、薫自身だった。
恵は後に、志々雄との戦いで傷ついた剣心たちを治療するため京都へ駆けつける。
恵の選択は「京都には行かない」という決まりではなかった。
出発の時には東京の患者を診続け、医者として必要になった時には京都へ行く。
剣心を思う恵の気持ちは、剣心の後を追うかどうかだけでは測れない。
東京に残る恵と京都へ向かう薫は、異なる場所から剣心を支えた。


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