沙村広明さんは、一つのコマに吹き出しを五つ、六つと並べ、会話が一気に進む場面を書くのが好きだと話しています。
『波よ聞いてくれ』では、安野モヨコさんの『ハッピー・マニア』のテンポを意識し、主人公の喋りを楽しめる漫画を描こうとしていました。
ミナレが延々と喋っていても面白い、読むラジオという構想を、どんな書き方で形にしたのか。
2020年の取材で、沙村さんは、メモしてきたギャグを、作中の番組への投稿として使えることも話しています。

会話のテンポでは『ハッピー・マニア』を意識した
沙村さんは、2020年のWebNewtypeのインタビューで、恋愛コメディを考えたとき、頭にあったのが『ハッピー・マニア』だと語っています。
ページの半分ほどを使ったコマに、いくつもの吹き出しが並び、話が進んでいく。
そのノリやテンポを、『波よ聞いてくれ』では、これまで以上に意識したという説明でした。

沙村さんは、こうした会話の台詞を考えることも楽しいと話しています。
主人公の喋る内容だけでなく、コマの中で言葉が続いていく勢いも、描きたい会話の一部でした。
台詞を書く時間は『無限の住人』より増えた
同じ取材で、沙村さんは『無限の住人』と『波よ聞いてくれ』の台詞にかける時間を比較しています。
『無限の住人』では一話の台詞を半日ほどで書いていたのに対し、『波よ聞いてくれ』では二日ほどかけると話しました。

ラジオ放送がある回は、コラム一本を書くほどの文字量になるという説明です。
沙村さんは、楽しいけれど大変だと話しています。
短編の経験から、場面を次々と切り替える
『波よ聞いてくれ』の作り方について、沙村さんは、それまで描いてきた短編の経験も挙げています。
ページを縮め、場面を次々と切り替える考え方が身についているという話でした。

沙村さんは、2020年の取材で、『波よ聞いてくれ』は一話二十二ページで、その中で満足してもらいたいと語っています。
会話をたくさん入れながら、場面を切り替えて話を進める。
台詞の多さと一緒に、短いページ数の中でどう読ませるかも考えていました。
ギャグのメモを、ラジオ番組への投稿として使える
沙村さんは、同年の本人インタビューで、コメディを描くとき、思いついたギャグを携帯電話へメモしていると話しています。
『ハルシオン・ランチ』の頃も、そうしたネタをためていました。
沙村さんは、ためたギャグを、作中の会話へ入れにくいこともあったと話しています。
『波よ聞いてくれ』では、ラジオ番組へ届くリスナーの投稿として、そのネタを使える。
それまでの会話と関係のないネタにも、作中で使う場面ができたのです。
まとめ
沙村さんは、ミナレの長い台詞を作りながら、ためてきたギャグにも番組への投稿という出番を与えていました。
登場人物の会話には入れにくかったネタも、放送の中に出せる。
『読むラジオ』には、主人公の喋りと、作者がためてきたギャグを一緒に楽しめる作りもあるのです。


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