藤田和日郎さんは、自分の描きたいものを信じて漫画を作ると話しています。
同時に、藤田さんにとって最高のものは「読者がよろこんでくれるコト」だとも語っています。
藤田さんは、描きたい人情や信念を大切にしながら、誰に何を楽しんでもらうかを考えて漫画を作っています。

流行と違っても、人情や信念を描きたい
藤田さんは2019年の本人インタビューで、漫画の流行が自分の作風とは違う方向へ進んでも、不安になるばかりではないと話しています。
自分が描きたい人情や信念は、その時代の読者には新しく感じられるかもしれない。
そう考えて、描きたいものを貫こうとしていました。
流行を狙う方法も、藤田さんは否定していません。
そのうえで、自分の好きなものや伝えたいものを信じてほしいと語っています。
長く活動できたことについても、描きたいことを描いてきた結果だったと振り返っていました。
初めて漫画を読む人に、何を届けたいのか
自分の好みを大切にする藤田さんには、思い浮かべる読者がいます。
同じ取材の前編では、自分がよいと思う生き方や、曲げられない信念、昔ながらの人情を、初めて漫画を読む人へ描きたいと話しています。

藤田さん自身は、正義の味方が憎らしい人物を倒し、勝負に決着がつく話を好んでいます。
悪役にも事情を描く一方、悪役が人を不幸にしたことには、物語の中でけじめをつけたい。
そうした好みと、初めて漫画を読む人に伝えたいものが、少年漫画を描く理由につながっています。
好きな世界を、読者も楽しめるものにする
藤田さんは、石を積み上げて独特の建物を作った、シュヴァルの理想宮の話が好きだといいます。
自分がよいと思うものを、長い時間をかけて作り続ける姿を、漫画家が描きたいことを積み重ねる姿になぞらえていました。
ただ、藤田さんはそこで、プロの漫画家には読者を想定する必要があると話を続けます。
どういう人に、何を読んでもらいたいのか。
自分で選んだ娯楽の中で、ほかの人にも楽しめるものを作ることが大切だというのです。
怖い話にも、読者が親しめる人物を置く
『双亡亭壊すべし』の凧葉務には、その読者への気遣いが表れています。
藤田さんは、怖い物語の中に飄々とした人物がいれば、怖いものが苦手な読者も安心できると考えました。
軍人や霊能者ばかりが怪異に立ち向かう話では息苦しくなる、というのが、凧葉の性格を決めた理由です。


恐ろしい屋敷を舞台にしながら、そこへ入っていく人物には親しみを持てる。
藤田さんは、怖い話を描きたいという思いを持ちつつ、読者がその世界を楽しめる人物も考えていたのです。
映画から受けた影響や、凧葉を強くしすぎなかった理由は、凧葉のモデルと人物づくりを紹介した記事で詳しく扱っています。
まとめ
藤田さんは、信念を貫く人物の活躍も、怖い場所で親しめる人物に出会う安心も、読者に届けたいものとして考えています。
好きなものを選ぶところから、読者が楽しめる人物や物語を作るところまでが、藤田さんの漫画づくりなのです。
自分の好きな世界へ、読者をどう招くか。
その工夫を知ると、作品の熱さや怖さとともに、なぜその人物が登場するのかにも目が向きます。


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