『GetBackers』は誰が何を作った? 青樹佑夜と綾峰欄人の分担

原作青樹佑夜・漫画綾峰欄人と記載されたGetBackers第1巻の表紙 漫画家・作者
©青樹佑夜・綾峰欄人/講談社。

『GetBackers―奪還屋―』は、青樹佑夜が原作、綾峰欄人が漫画を担当した作品です。
青樹は樹林伸のペンネームで、綾峰は別の漫画家です。
綾峰さんは完成原稿の絵を描くだけでなく、漫画のコマや台詞を組み立てるネームも作っていました。
本人が語ったデビュー時の経験から、その仕事を見ていきます。

表紙の「原作」と「漫画」は別の人

原作青樹佑夜・漫画綾峰欄人と記載されたGetBackers第1巻の表紙
『GetBackers奪還屋』第1巻。原作・青樹佑夜、漫画・綾峰欄人。©青樹佑夜・綾峰欄人/講談社。 出典

第1巻の表紙には「原作 青樹佑夜」「漫画 綾峰欄人」とあります。
講談社の書誌でも、綾峰欄人が「著」、青樹佑夜が「原作」と記載されています。
綾峰さんにとって、この作品は1999年に『週刊少年マガジン』で始まったデビュー作でした。
美堂蛮と天野銀次の奪還劇は、原作者と漫画家が組んで作ったものです。

青樹佑夜という名前と、他作品で使う名義の関係は、樹林伸のペンネームを整理した記事で紹介しています。
綾峰さん自身は、デビュー作の見せ方について、次のような経験を話しています。

青樹に見せたネームが、自信になった

綾峰さんは本人インタビューで、『GetBackers』のネームを担当編集者や青樹さんに見せた経験を振り返っています。
そのときに言われたのが、「見せ方が分かってるね」という言葉でした。
綾峰さんは、自分が続けてきた方法への自信がつき、その描き方を突き詰めようと思ったそうです。

眼鏡をかけて鉛筆を持つ綾峰欄人の自画像
綾峰欄人の自画像。2012年の本人インタビューより。©綾峰欄人。 出典

ネームは、コマを割り、人物や台詞を置いた下描きです。
きれいな線で完成原稿を描く前に、どの場面をどんな画面で見せるかを考える工程でもあります。
綾峰さんが褒められたのも、その「見せ方」でした。
綾峰さんは仕上げの線を描く前から、漫画の画面を組み立てていたのです。

綾峰さんは『GetBackers』では台詞が多く、コマが詰まりがちだったと話しています。
人物が窮屈に見えてしまうことも、自分の弱点として挙げました。
台詞を入れることと、人物の表情や動きを見せることを、限られた紙面で両立させる難しさがあったのです。

原作者も、絵になる場面を考えている

原作者の仕事についても、本人の説明があります。
青樹さんが樹林伸として応じた2019年のインタビューでは、自分の漫画原作を台詞とト書きのある脚本形式で書くと説明しています。
ト書きは、人物の動きや表情などを伝える文章です。
本人は頭の中で絵を思い浮かべ、ページやコマの流れも考えながら書いているそうです。

マリアージュの台詞とト書きが並んだ樹林伸の脚本
『マリアージュ』の脚本。『GetBackers』の原作原稿ではありません。©亜樹直/講談社。周囲の白い余白のみ除去。タップすると原寸で読めます。 出典

公開されているこの脚本は、亜樹直名義の『マリアージュ』のものです。
『GetBackers』の原作原稿ではありませんが、樹林さんの原作がどのような文章なのか分かります。
台詞の間には、登場人物の表情や動きの指示が入っています。
樹林さんは、漫画家が作ったネームを読み、担当編集者を交えて案を出し合うことも説明しました。

原作者が物語を書き、漫画家がそれを絵にするという分担の中にも、画面の見せ方を一緒に考える仕事があります。
原作者が書いた内容を、漫画家がコマや人物の表情にする。
綾峰さんの回想からも、『GetBackers』でネームを青樹さんと編集者に見せていたことが分かります。
ただし、個々の台詞を誰が直したか、蛮や銀次の案をどちらが最初に出したかまで、これらの公開資料だけで決めることはできません。

後年には、青樹のような仕事にも挑んだ

後年、綾峰さんは『マジェスティックプリンス』で、シナリオとネームを担当しました。
作画は新島光で、公式クレジットでは綾峰さんは「漫画構成」と表記されています。

マジェスティックプリンスのネーム二ページ。人物と吹き出しの配置が描かれている
『マジェスティックプリンス』のネーム。綾峰欄人。2012年の本人取材で公開されたもの。取得原寸303×202pxで掲載。 出典

綾峰さんは2012年の本人取材で、青樹さんのような仕事を一度してみたい気持ちがあったと話しています。
この作品では、綾峰さんがシナリオとネームを作り、編集者と新島さんを交えて案を出し、新島さんが下書きやペン入れをする形でした。
綾峰さんは原作側に回ったことで、その立場の苦労を実感したといいます。
『GetBackers』で原作者と組んだ綾峰さんは、後の作品では、シナリオを作って作画担当へ渡す仕事も経験したのです。

まとめ

二人の分担で注目したいのは、原作者も漫画家も、読者への伝わり方を考えていることです。
綾峰さんが評価された「見せ方」には、コマや台詞を組み立てる仕事がありました。
表紙に並ぶ二つの名前を知ると、完成したページの背後に、画面を組み立て、そのネームを見せて意見をもらうやり取りがあったことにも目を向けられます。

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