『烈火の炎』柳が炎になる意味――癒しの力で、一緒に戦う

炎となった柳の笑顔を喜ぶ風子と土門 烈火の炎
『烈火の炎』安西信行/小学館、第33巻。

烈火の炎になった柳は、烈火と一緒に戦えることを喜ぶ。
柳はもともと、傷ついた烈火や仲間を癒してきた少女だ。
最終決戦では、その治癒の力が、天堂地獄の強さを崩す力になる。
柳を守ろうとする烈火と、烈火とともに戦う柳。
一緒に戦った後、柳は烈火に、姫と忍の関係はもう終わりだと告げる。
柳が炎になる場面から、二人が名前で呼び合う結末までをたどってみたい。

柳の魂を奪わせないための決断

最終決戦では、烈火たちの呼びかけが柳へ届き、精神操作が解ける。
だが、仲間のもとへ戻った柳は、烈火の胸の中で命を落とした。
さらに、柳の魂まで天堂地獄に吸収されようとしていた。
烈火には、柳の魂を奪わせないための決断が迫られていたのだ。

柳を抱きしめる烈火
『烈火の炎』安西信行/小学館、第33巻。

柳の死を前に、烈火は立ち止まってしまう。
烈火に声をかける紅麗は、かつて大切な人を失い、その人を自分の炎にしている。
その紅麗に促され、虚空から裂神の力を使う道を示された烈火は、柳を炎にすることを選ぶ。
柳を守りきれなかった烈火が、なお柳のためにできることを選び取る場面である。

炎になった柳の姿を見た風子は、柳が幸せそうに笑っていることを土門に伝える。
風子は、姿が変わっても幸せそうに笑う柳を見て涙を流す。
柳自身も、烈火と一緒に戦えることを喜んでいる。
守ることを誓った烈火の戦いに、柳も自分の力で加わるのだ。

炎となった柳の笑顔を喜ぶ風子と土門
『烈火の炎』安西信行/小学館、第33巻。

柳が癒すのは、天堂地獄が奪ってきた命

天堂地獄は、人々の命を取り込み、強さを得ていた。
炎で焼かれることにも耐えるその体を、柳の癒しの炎が崩していく。
ここで柳が治しているのは、森光蘭の傷ではない。
天堂地獄が体を造るために奪ってきた、人々の命だ。

柳は、その魂を癒して成仏させる。
魂が解放されると、天堂地獄が奪っていた力も失われていく。
烈火たちが攻撃しても倒せなかった相手から、柳は強さの源を取り除くのだ。
人を助ける治癒の力が、人の命を奪って生きる天堂地獄を追い詰める。

森光蘭は、自分が永遠に生きるために柳の治癒の力を欲していた。
しかし柳が最後に癒すのは、森が奪ってきた人々である。
森が自分のために取り込もうとした力が、奪われた命を救うために働き、森の望みを崩していく。
森は自分のために柳を取り込もうとしたが、柳は奪われた人々のために力を使ったのだ。

姫と忍を終えて、名前で呼び合う

天堂地獄との戦いが終わると、火竜や炎術の力も消えていく。
炎になった柳も消えるため、烈火は再び柳との別れを迎えたように見える。
だが、柳の体には損傷がなかった。
炎から解放された魂は体へ戻り、柳は人間として烈火のもとに帰ってくる。

烈火と炎となった柳を描いた最終巻の表紙
『烈火の炎』安西信行/小学館、第33巻表紙。

平穏な日々へ戻った柳は、烈火に、姫と忍の関係はもう終わりだと告げる。
柳は烈火を名前で呼び、烈火にも自分を名前で呼んでほしいと伝える。
一緒に戦えた喜びに続いて、今度は守られる姫という呼び方から離れ、恋人として向き合おうとするのだ。

最後に烈火が打ち上げるのは、実家から持ってきた花火だ。
火竜の炎を失った後にも、花菱家の花火が二人の日常を彩っている。

烈火が柳を守ろうとする戦いは、最後に、柳と一緒に戦うことで決着を迎える。
柳は炎になったまま烈火を支え続けるのではなく、人間として烈火の隣に帰ってくる。
戦うための炎は消えても、名前で呼び合う二人はそこに残る。
二人が一緒に戦えたことが、一緒に過ごせる日常へつながるところに、この結末の喜びがある。

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