陽炎の不死の呪いを解いたのは、螺閃の魔導具「光界玉」だった。
ただし、螺閃が考えた通りにすべてが進んだわけではない。
陽炎を救うために自分が消えるつもりだった螺閃は生き残り、光界玉だけが砕ける。
この結末は、光界玉が何を消せるのかと、螺閃が何を消そうとしたのかを分けると分かりやすい。

不死を「命」から切り離して消す
陽炎は、幼い烈火を時空流離で未来へ送り出した代償として、死ねない体になった。
烈火が成長した現代まで、陽炎は四百年を生きている。
息子に再会できても、その呪いが解けるわけではなかった。
光界玉の力は、相手を傷つけることとは違う。
虚空の説明では、光界玉は物の存在そのものを消し、記憶や病魔のように形のないものも対象にできる。
螺閃が選んだ対象は、陽炎本人ではなく、陽炎にかけられた不死の呪いだ。
陽炎を生かしたまま、死ねない体という状態を取り除こうとしたのである。
螺閃は救う代償として、自分が消えることを望んだ
光界玉で何かを消せば、使い手も、それに見合うものを奪われる。
螺閃はすでに声を失っており、鬼凜が心を読んで言葉を伝えている。
呪いを消す力があっても、螺閃が無傷で使える魔導具ではなかった。

螺閃には、自分の母親を消してしまった過去がある。
母を失った螺閃は、自分が消える場所と、その意味を求めていた。
一方、烈火は、ようやく出会えた母・陽炎の呪いを解こうとしている。
螺閃は烈火との戦いを経て、その願いをかなえることを、自分の消える理由に選んだ。

螺閃は陽炎を救い、その大きな反作用で自分も消えるつもりだった。
鬼凜が止めようとするのは、陽炎の救済に反対だからではなく、螺閃を失いたくないからだ。
同じ解除を前にして、螺閃と鬼凜が望む結果は違っている。
光界玉が砕けても、解除は失敗していない
実際に光界玉を使うと、玉は砕け、螺閃は消えずに残った。
螺閃が覚悟していた反作用は起きなかった。
解除の結果を示すのは、その後の陽炎の傷だ。
以前なら回復した傷が治らなくなり、陽炎の体から不死の力が失われたことが分かる。
光界玉が砕けたことだけを見て失敗とするよりも、使った後の陽炎の体に起きた変化が答えになっている。
螺閃が求めたのは、陽炎の呪いの消滅と、自分自身の消滅だった。
起きたのは前者だけだ。
陽炎を救うための行為が、螺閃の死で終わらなかったところに、この場面の救いがある。
呪いが解けた陽炎には、傷つく体が戻る
陽炎の呪いが解けるのは第30巻で、天堂地獄との決着より前だ。
最終決戦後に魔導具などが失われる出来事とは、順序を分けて考える必要がある。
陽炎は、光界玉が使われた後に、不死の力がなくなった体で戦いに関わっている。
傷が治らなくなるのは、戦っている陽炎にとっては危険な変化だ。
それでも、陽炎を苦しめていたのは、いつまでも死ねないことだった。
呪いの解除は、さらに頑丈な体を手に入れる解決ではなく、普通に傷つく体へ戻る解決になる。
螺閃は、母を消してしまった光界玉を、烈火の母を助けるために使った。
その使い手まで失われずに済んだため、鬼凜も螺閃を失う結末を免れている。
陽炎の呪いを解く行為が、螺閃の望んだ死を超えて、二人を生かす結末になったのだ。


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