関西の大きな組織の頂点に立つ原田は、赤木から「成功という名の棺」の中にいると言われる。
金も権力も持つ原田が、なぜ動けないのか。
原田は成功によって、貧しさや人から軽んじられる惨めさから守られた。
ところが、成功した後の原田は、その地位を守り続けなければならない。
原田を守るはずだった成功が、今度は原田の毎日を縛っているのだ。

原田が成功を求めた理由には、切実さがある
通夜で原田は、赤木に生きる気が少しでも残っているなら、生きればいいと働きかける。
赤木がまだ生きたい気持ちもあると答えると、原田は、それならなおさらと食い下がる。
この会話で、生き方を問われるのは、やがて原田自身になっていく。

原田にとって成功は、貧困や、人から軽んじられる惨めさから自分を守るものだった。
金や肩書きには、原田を苦しい立場に追い込ませない力があった。
成功を積むことに意味があると考える原田には、そう考えるだけの理由がある。
赤木も、生きていく以上、勝つことや成功は必要だと認めている。
赤木自身も成功を目指してきたと話す。
二人の違いは、成功を求めたかどうかではなく、得た成功との付き合い方にある。
赤木は成功を少し積むと崩し、平らに戻してきたという。
原田は、その成功を積み上げ、大きな組織を率いる立場まで来た。
守られる立場が、守り続ける役目になる
赤木が指摘するのは、成功した原田に残されている行動の狭さだ。
原田は大物らしく振る舞い、組長としての顔を保たなければならない。
悲しくても泣けず、怒っても、そのままぶつけるわけにはいかない。
自分の感情より先に、立場にふさわしい振る舞いが求められる。

勝って地位を得ても、原田は自由ではなかった。
その地位を維持するために、原田は成功者であり続けることを求められる。
赤木は、原田が自分の意思で休んだり、成功者らしくない振る舞いをしたりすることも難しいと指摘する。
原田が築いた成功が、今度は原田の振る舞いを決めている。
「棺」という比喩は、ここで効いてくる。
立派な肩書きも組織も外からは見えるが、その中にいる原田は満足に動けない。
成功の大きさと、原田が動ける範囲の広さは一致していないのだ。
原田自身が、赤木の指摘を認めている
赤木の言葉を聞いた原田は、心の中ではその通りだと認める。
原田の予定は半年先まで、義理や付き合いで埋まっている。
原田は感情を押し殺し、予定を堂々とこなしていく。
成功を維持し管理する番人のようだという原田の独白が、赤木の言葉を裏づける。
赤木が原田を外から批判しただけで、話が終わっていないところが大きい。
原田も、自分が勝ち取ったものに自分の生活を狭められていると感じている。
貧しさや屈辱から逃れるために求めた成功が、別の形で原田を苦しめている。
そのことに、原田本人が気づいてしまう対話なのだ。
成功者として何を持つかという話から、原田自身がどう生きているかという話へ、問いは変わっている。
組織を動かす力を持つ原田が、自分の毎日は自由に動かせない。
自分を守るために手にした成功を、今度は自分が守り続ける。
原田の立場は強くなったのに、その役目を果たす原田本人は、好きなように生きられなくなっていた。
赤木のいう「成功という名の棺」は、そこにある。


コメント