『天』トップ取り予選はビケ殺しと何が違うのか――味方への差し込みが作戦になる理由

人数による包囲を語る原田に強者について言い返す赤木 天 天和通りの快男児
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第5巻。

東西戦の予選では、僧我が阿久津に、原田が三井に差し込む。
味方の和了牌をわざと切り、点を渡したのだ。
その結果、阿久津と三井が一位で勝ち抜く。
原田と僧我の放銃は、自分の得点を減らす代わりに、西軍の決勝進出者を増やす選択だった。

この作戦を見た赤木は、西軍のやり方を批判する。
原田は人数を力と考え、赤木は、数をそろえれば最後まで勝てるという考えを笑う。
二人の対話は、予選の条件を知ると、何を争っているのかがはっきりする。

ビケ殺しでは最下位を避け、トップ取りでは一位を取る

最初の予選は「ビケ殺し」だった。
半荘の最下位が脱落し、ほかの三人は残る。
初戦では健・金光・坂口が脱落し、それぞれの卓から一人が消えた。
この段階では、卓の全員が一位を取らなければ残れないわけではない。

三卓で初戦のビケ殺しを打つ東西の雀士たち
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第5巻。

次の「トップ取り」では、半荘の一位が決勝進出を決めて卓を抜ける。
残った打ち手たちは、次の勝ち抜きを争う。
決勝に進めるのは八人なので、予選を通過した者が増えるほど、残りの枠は減っていく。
最下位にならずに打ち続けるだけでは、自分の決勝進出は決まらない。

原田と僧我は、味方を先に勝ち上がらせる

僧我から点を受け取った阿久津は、一位で卓を抜ける。
原田から点を受け取った三井も、一位で抜ける。
差し込んだ二人がその半荘で優先したのは、自分の一位ではなく、西軍の味方を決勝へ送ることだった。
原田と僧我は卓に残り、その後の勝ち抜きを争う。

このとき、原田が見ているのは、決勝で一人の東軍選手を複数の西軍選手が囲める状況である。
原田は、この級の打ち手が三人で包囲すれば、どんな男でも圧倒できると考える。
西軍の進出者が多ければ、決勝の卓でも味方同士で協力して東軍の打ち手を追い込める。
味方への差し込みは、目の前の半荘だけでなく、その次の対局の人数をそろえるための作戦なのだ。

決勝の八枠と東軍への圧力について語られる場面
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第6巻。

僧我の卓でも、決勝の八枠のうち四枠を西軍が早く押さえれば、東軍が焦るという話が出る。
西軍は決勝での人数に加え、残る枠が減ることで東軍が受ける圧力も見ている。
一人の勝ち抜きは、その人だけの成功で終わらず、まだ卓に残る者たちの条件も変えていく。

赤木が拒むのは、人数で強者を抑え込めるという見込み

赤木は、数だけを決勝へ上げてどうするのか、と原田に言う。
赤木の言葉は「最後に勝つのは一人だぜ」である。
原田は味方を増やして包囲すれば勝てると考えるが、赤木は、その包囲でどんな強者でも倒せるとは認めない。
強者はそうした小細工とは無関係のところに存在する、と赤木は言い返す。

人数による包囲を語る原田に強者について言い返す赤木
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第5巻。

西軍の作戦は、予選では実際に阿久津と三井を勝ち上がらせている。
赤木が挑んでいるのは、その先も人数で勝負を支配できるという原田の見込みだ。
赤木は、西軍の味方が予選を通ったことだけでは、決勝でどんな強者にも勝てる根拠にならないと考えている。

ビケ殺しでは、誰を一人落とすかが勝負を決めた。
トップ取りでは、誰を先に通すかが、残る枠と決勝の顔ぶれを変える。
原田と僧我の差し込みは、この違いを使った西軍の作戦だった。
人数をそろえることで強者を封じようとする原田と、その包囲さえ越える強者を語る赤木。
予選の一位を味方に渡す場面から、二人の考える「最後に勝つための力」の違いが見えてくる。

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