『天』天はなぜ2000点を狙ったのか――赤木の差し込みを逆手に取る

同じ待ちで赤木の差し込みを受け、西入りを狙う天 天 天和通りの快男児
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第3巻・第21話。

赤木との対局の南四局で、天が必要としていたのは、赤木から直接取る5200点か、満貫のツモだった。
ところが天は、途中から2000点の和了を目指す。
高い手を諦めて、どうやって逆転の機会を残そうとしたのか。

天が利用しようとしたのは、赤木自身の差し込みである。
赤木が別の打ち手に振り込むところへ、天も同じ牌でロンする。
天一人では届かない点数を、二人の和了で赤木から引き、勝負を西場へ持ち越す狙いだった。

赤木は、自分が和了しなくても勝てる

南四局の点数は、赤木が37000点、天が27500点。
9500点の差がある。
天が赤木から5200点を直接取れば、天に5200点が増え、赤木から同じ点数が減るので、二人の差は10400点縮まる。
天が自分の和了だけで赤木を追い越すには、それだけの手が必要だった。

南四局の赤木37000点、天27500点と、二人の配牌が示される場面
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第3巻・第21話。

しかし、天の配牌は四シャンテンで、和了までは遠い。
赤木も、天が高い手を仕上げるには時間がかかると見ている。
赤木は途中で自分の手の伸びも見限り、別の打ち手への差し込みへ切り替える。
赤木が狙うのは、自分の和了ではなく、天が逆転する前にこの半荘を終わらせることだ。

自分の手の伸びを見限り、安い手への差し込みを選ぶ赤木
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第3巻・第21話。

その打ち手に5200点を払っても、赤木には31800点が残る。
天の27500点より上であり、赤木はトップを保てる。
自分が失点することを、勝負を終わらせる手段にしているのである。

赤木は、差し込み先の手がさらに高くなる危険も考えている。
ドラの三索は赤木が三枚抱えており、差し込みを狙う打ち手の手には簡単に絡まない。
天が読むべきなのは、赤木自身の手だけではない。
赤木が誰へ、いくら払おうとしているのかまで読む必要があった。

ドラの三索を三枚抱え、差し込み先の打点を考える赤木
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第3巻・第21話。

天は「赤木を追い越す手」から「勝負を続ける手」へ変える

天はなんとかテンパイするが、ピンフのみでは足りない。
5200点以上へ育てるには、さらに牌を引き、待ちも変えなければならない。
一方、差し込みへ向かった赤木を前に、天にはその時間がない。

高い手へ育てる時間がなく、赤木の差し込みを利用しようと考える天
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第3巻・第21話。

そこで天は、赤木が振り込もうとしている打ち手と、同じ牌を待つ方針を選ぶ。
この対局では、一枚の捨て牌に二人がロンするダブロンが使える。
赤木が一人へ払う5200点に、天の和了点を加えられるわけだ。

天が考えているのは、まず西入りさせることだった。
天は、この局で二人の和了点を合わせて7000点を超えれば、西入りできると読む。
赤木の37000点を、30000点未満にする計算だ。
天自身が今すぐ赤木を追い越せなくても、延長した西場で戦う機会は残る。

同じ待ちで赤木の差し込みを受け、西入りを狙う天
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第3巻・第21話。

ただ、天もロンすれば何点でもよい、というわけではない。
赤木が5200点と1000点を払っても、残るのは30800点。
まだ30000点を超えている。
5200点と2000点なら、赤木は29800点になる。
天が求める2000点は、勝負を続けるために必要な点数だった。

安い手への差し込みに、2000点の手を重ねる

天は、赤木が差し込み先の手をきちんと読んでいると考える。
赤木が自分の和了にこだわらず、狙った牌を捨ててくれるなら、その牌を天も待てばよい。
天は赤木の判断を邪魔するのではなく、その判断どおりに赤木が動くところを利用する。

もっとも、赤木は天のピンフの手も把握している。
天に1000点を取られるだけなら、西入りはないと考えられる。
天には、待ちを合わせながらもう一役を付ける必要があった。
そこで天が狙うのが、一盃口である。

ピンフの1000点では足りず、一盃口を加えて2000点を目指す天
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第3巻・第21話。

この場面での天の工夫は、手を安くしたことだけではない。
赤木が勝負を終わらせるために選んだ失点を、天は勝負を続けるための失点へ変えようとしている。
同じ5200点の差し込みでも、天の2000点が重なるかどうかで、決着の意味が変わるのだ。

赤木から高い手を直撃させる道が間に合わなくても、赤木が別の打ち手に払う点数は利用できる。
天は自分の手牌だけで逆転を考えるのをやめ、卓を囲むもう一人の手と、赤木が選ぶ終わらせ方まで見た。
2000点を目指す判断には、この勝負の広い見方が表れている。

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