クリスマスの夜、天は雪の降る庭で、折れたツリーを支え続ける。
室内では吉野と娘の尚子がパーティーを楽しんでいるが、天はその席に戻れない。
天の姿を見たひろゆきは、尚子に「あの人はサンタクロースかもしれない」と話す。
天が守ったのは、庭に立つ一本の木と、それを見て喜ぶ親子の時間だった。
この夜の人情は、天がツリーを支えるまでの行き違いと、天が戻らない理由を知るひろゆきの言葉を合わせると、よく見えてくる。
怒っていた父親も、娘を喜ばせようとしていた
尚子は、ツリーやケーキがあって、みんなで過ごす普通のクリスマスを望んでいた。
ところが父親の吉野は、西洋の習慣に合わせる必要はないと怒る。
天が尚子に、父親も話を聞いてくれると請け合っても、吉野は取り合わない。

天たちは、尚子に内緒でパーティーを用意することにする。
天は吉野を雀荘へ連れ出すが、吉野は夜になっても家へ戻る気配を見せない。
そこで天は、吉野が遊ぶ金を持っているから帰らないのだと考え、麻雀で金を取り上げようとする。
しかし、天の狙いは外れ、天のほうが負けてしまう。
その後、天は建設会社でツリーを飾る吉野を見つける。
吉野が用意していたのは、娘への贈り物だった。
この姿を見て、天は自分たちが勝手にしゃしゃり出たことを反省する。
パーティーを拒む父親だと思っていた吉野も、娘を喜ばせようとしていたのである。

天の親切は、最初から吉野の事情を分かっていた人の行動ではない。
天は尚子を助けようとして、父親の用意しているものを知らないまま口を出してしまった。
その天が事情を知った後、吉野の贈り物を守る役を引き受ける。
尚子を助けようとする天の行動が、父親の用意したツリーを守ることにつながっている。
天が庭に残ることで、親子の喜びが続く
吉野が庭へ運んだツリーは、根元が傷んでいた。
尚子に見せようとする直前、木が折れかける。
吉野はそのことに気づかないまま、尚子にツリーを見せるため窓を開ける。
尚子の前には、きれいに立つツリーがあった。
天が木の陰に隠れ、倒れないよう支えていたのである。
ひろゆきは、その天の姿に気づく。

吉野が娘に見せたかったツリーは、天の手で立っている。
尚子は父親の贈り物を喜ぶことができ、吉野も娘の喜ぶ顔を見ることができる。
天は木の陰にいるため、その手助けを親子に知らせることもない。
ただし、ツリーが立った一瞬だけで、天の役目が終わるわけではない。
手を離せば木は倒れてしまう。
パーティーが続くあいだ、天も庭に残り続けることになる。

三時間が過ぎても、天は木を支えている。
屋内のにぎやかな時間と、雪を浴びる天の姿が、同じ夜の出来事として描かれる。
ひろゆきは、楽しい時間が続くあいだ、天が外で木を支えていたことを思う。
天が庭に残る負担まで見ると、親子の喜びを守る行動の大きさが分かる。
ひろゆきだけが知っている「サンタクロース」
尚子は、サンタクロースがいないことくらい知っている、とひろゆきに話す。
それでも、その夜はサンタクロースがいるかもしれないと思った。
ひろゆきは、尚子の話を聞いた後、庭で木を支える天を見つめる。

天の姿が見えないことを尚子が気にすると、ひろゆきは、天に手の離せない用事ができたのだろうと答える。
さらに、天はサンタクロースかもしれない、と続ける。
クリスマスの夜は忙しくて戻ってこられない、という説明まで添える。
天の「手の離せない用事」は、ひろゆきにとっては冗談だけではない。
天は実際に、ツリーから手を離せずにいる。
ひろゆきはその事情を知ったうえで、尚子にサンタクロースの話として伝えている。

尚子は「嘘ばっか」と笑うが、ひろゆきはもう一度、天は本当にサンタクロースかもしれないと言う。
その言葉には、親子の楽しい夜を、見えないところで支える天への思いがある。
尚子にツリーを贈ったのは父親の吉野で、その贈り物を台無しにさせなかったのが天だった。
ひろゆきは、父親の贈り物を喜ぶ尚子と、雪の中で支え続ける天の両方を見ている。
尚子には見えないその働きまで知っているから、ひろゆきの「サンタクロース」という言葉は温かい。


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