「沼」を攻略するため、カイジは球を打つ腕前を頼りにしない。
店は釘の幅を調整し、途中の役物を操作し、最後のクルーンまで傾けていた。
当たりにくい台を相手にしているようで、実際には当たりへ向かう道を店が管理している。
カイジたちが探したのは、台の上で運よく球を通す方法ではなく、その管理に手を入れられる場所だった。
釘を動かすのはカイジではなく、店の点検係
最初の関門は「釘の森」だ。
釘の幅は、店が日々点検している。
そこでカイジ側が狙ったのは、釘の間隔を測るゲージ棒だった。
一条たちはその棒を基準にして釘を調整する。
基準の側が変われば、店員はいつもの仕事をしているつもりで、球の通り道を広げてしまう。

ここで面白いのは、カイジが釘に触れ続ける必要がないことだ。
一条たちが台を守るために繰り返す点検が、逆にカイジの準備を台へ反映していく。
勝負は球を打つ前から、店の作業手順をめぐって始まっていた。
壊れた役物は、修理されるからこそ隙ができる
次の関門では、店が役物を動かして球をはじける。
カイジたちはこの役物を、その場の操作だけで突破しようとはしなかった。
坂崎が台を壊した後、店には部品を交換する機会が生まれる。
カイジ側はその交換される部品へ仕込みを入れた。

一条が遠隔操作で球を止めようとしても、役物の支柱そのものが内側から崩れれば止められない。
店が台を直すための修理が、カイジたちにとっては仕込みを台へ入れる経路になった。

釘と役物では手を入れた場所が違う。
けれど、どちらも店の管理を避けるのではなく、店が台を調整・修理する道筋を利用している。
三段クルーンで、勝負の範囲は建物まで広がる
最後に球を止めるのは三段クルーンの傾きだ。
一条は台だけでなく、クルーンや床の傾きも計算に入れていた。
釘や役物を通っても、この傾きのままでは当たり穴へ向かえない。

カイジたちは、台に細工して傾きを直すのではなく、建物の片側に大量の水を置いた。
地盤が沈む力を使い、沼のあるフロアごと傾けたのだ。
一条が台の外の床まで使って球の行き先を決めたから、カイジも台を支える建物へ手を伸ばした。

釘の点検道具、役物の交換部品、建物の重さ。
三つの対策に共通するのは、球の行方を決める操作点を変えたことだ。
その操作点を順にたどるうち、手を入れる場所は台の外へ広がっていった。
台の外を変えても、勝ちはまだ決まらない
準備によって球は最後のクルーンまで進む。
しかし一条は当たり穴の周囲から風を吹き出し、球をはじいた。
カイジ側が用意した三つの対策だけで、勝利が確定したわけではない。

球を打ち続けるには金も要る。
坂崎が追加の資金を持ち込み、カイジたちは勝負を続ける。
最後は大量の球がクルーンを埋め、風を越えて当たり穴に入った。
この結末には、事前の工作だけでなく、一条の対抗策と、それでも打ち続けるために集まった金が関わっている。


「沼」の攻略が台の外まで広がったのは、カイジの発想だけが突飛だったからではない。
一条が勝敗を左右する仕組みを、釘の点検から台や床の傾きにまで張り巡らせていたからだ。
カイジたちはその仕組みを一つずつ探り、店の作業と設備そのものを攻略の対象に変えた。


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