『天』原田の空テンはなぜ有効なのか――和了れない五筒待ち

原田の待ちとして五筒を指定する場面 天 天和通りの快男児
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第14巻。

五筒を四枚とも暗槓した原田が、五筒を待っている。
山に五筒は残っていないから、原田はその待ちでツモ和了できない。
それでも、この空テンは天を苦しめる。
原田は、和了するためではなく、天の逆転を遅らせるためにこの手を使う。

残り時間と点差を意識する天と原田
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第14巻・第120話。

原田は和了らなくても勝てる

このとき原田には点差のリードがあり、制限時間も終わりに近づいている。
追いかける天は、点を取らなければ逆転できない。
対して原田は、天に点を取らせず、時間を使わせればよい。
二人は同じ卓にいるが、欲しい結果は違っている。

二人麻雀では、先にテンパイを宣言した側がツモ和了を狙い、もう一方がその待ちを当てる。
待ちの指定が外れると、宣言者は五回ツモれる。
その間に和了らなければ、また待ちを読むやり取りへ戻る。
原田が先に宣言すると、天は自分の手を進める代わりに、原田の待ちを読まなければならない。

五筒を消す槓が、五筒待ちを隠す

原田は五筒を暗槓し、四筒を切ってリーチする。
五筒はもう引けないため、ツモ和了を目指す手として考えれば、五筒待ちは候補から外れそうに見える。
しかし、原田が作ったのはまさに嵌五筒待ちだった。
嵌張とは、四筒と六筒の間を埋める五筒を待つ形だ。

原田の待ちとして五筒を指定する場面
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第14巻。

原田の目的が和了なら、五筒を自分で使い切る選択は不合理に見える。
しかし、原田がここで欲しいのは、天が看破に手間取る時間である。
天が和了できる手を想定して読むほど、五筒を待つ可能性は考えにくくなる。
五筒が残っていないことは、原田の手の弱点であると同時に、待ちを隠す材料にもなるのだ。

天が四暗刻を選ばなかった理由も、同じルールにある

先の局では、天も通常の麻雀なら魅力的な手を見切っている。
一索を切れば四暗刻を狙える形で、天は二索を切ってリーチした。
役満でも、原田に待ちを当てられれば、その局はそこで終わってしまう。
天に必要なのは高い手を作ることだけでなく、その手で点を取ることだった。

大物手を持ってきた天
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第13巻。

天はこの手で、四暗刻ではなく、5200点を和了する。
二人麻雀では、役満を狙える形を残すことと、実際に得点できることが別なのだ。

四暗刻を見切った天の5200点の和了が振り返られる場面
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第14巻・第120話。

天は実際に点を取るために役満を見切り、原田は点差を守るために和了できない待ちを使う。
原田の空テンは、天が逆転に使いたい時間を、待ちを読む時間へ変える手なのである。

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