『エリア88』を描いた新谷かおるさんは、少女漫画誌『りぼん』から出発しました。
少年漫画へ進むきっかけになったのは、師匠の松本零士さんに、少女漫画を続けるか、少年漫画へ切り替えるか、その場で決めるよう問われたことです。
絵は少女漫画風でも、話の展開は硬派で、少女漫画に行き詰まりを感じていた頃の出来事でした。
飛行機は、少女漫画でデビューする前から好きだった
新谷さんは、大阪の伊丹空港の近くで育ちました。
2024年の本人インタビューでは、飛行機の爆音が子守歌のような環境で、子供の頃から飛行機が好きだったと話しています。
東京へ出るためのお金を、空港のアルバイトでためていました。
そこで見た貨物機のパイロットたちの姿は、後に『ALICE12』の人物を描く際にも生かされています。
航空機のある世界は、新谷さんが漫画家になる前から身近にありました。
『りぼん』に載った『吸血鬼はおいや?』
高校時代の新谷さんがひかれたのは、少女漫画の絵でした。
2021年のインタビューで、筋肉のたくましい男性が活躍する当時の劇画の世界には、なじめなかったと語っています。

1972年に「りぼん」の漫画賞佳作に入り、翌1973年の4月大増刊号に、少女漫画『吸血鬼はおいや?』が掲載されました。
大きな瞳の少女を描いたこのデビュー作は、後に『新谷かおるARTWORKS 戦闘機から美少女まで』にも収められています。
同じ頃、新谷さんは松本零士さんの仕事場でアシスタントを務めるようになります。
締め切り前でも、その場で進路を決めさせた松本零士
松本さんの問いは、忙しい仕事の最中に突然来ました。
少女漫画を続けるのか、少年漫画へ切り替えるのか。
新谷さんは、締め切り前であっても、すぐに決めるよう求められたと振り返っています。
とっさに選んだのが、少年漫画でした。

当時の新谷さんは、絵柄は少女漫画風でも、話の展開は硬派なものになっていました。
少女漫画で行き詰まりを感じていた新谷さんは、松本さんの言葉で少年漫画を描くきっかけを得たと、感謝を込めて話しています。
1977年には『戦場ロマン・シリーズ』を描き始めます。
その後、『ファントム無頼』や『エリア88』といった航空漫画へ、仕事が広がっていきました。
師匠のプロペラ機に対し、自分はジェット機へ
航空漫画を描くうえでも、松本さんの存在は大きなものでした。
2026年4月の『エリア88』上映イベントで、新谷さんは、師匠はプロペラ機を描く名手だったため、弟子として勝てないと考え、ジェット機の道を選んだと話しています。

少年漫画へ進む方向を問われただけでなく、同じ飛行機を描く作家として、師匠とは違う機体で自分の作品を作ろうとしていたのです。
幼い頃から好きだった航空機が、仕事場での経験を通して、漫画の主役になっていきました。
少女を描きたい気持ちも、作品に残った
新谷さんは2021年の取材で、少年漫画を選んだ後も、可愛らしい少女を描きたい思いが残っていたと語っています。
『クレオパトラD.C.』や『砂の薔薇 デザート・ローズ』では、女性たちを物語の中心に置きました。

少女漫画のデビュー作から航空戦記、女性を主人公にしたアクションまでを眺められるのが、2021年刊の『新谷かおるARTWORKS 戦闘機から美少女まで』です。
玄光社の刊行案内でも、『吸血鬼はおいや?』を生原画の風合いを生かして再録したことが紹介されています。

まとめ
新谷作品で目を引く機械と人物の取り合わせには、飛行機が身近だった少年時代と、少女漫画から始まった経歴の両方が重なっています。


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