安西信行の漫画の笑い|『烈火の炎』から『鋼鉄日記』へ

安西信行のエッセイ漫画『鋼鉄日記』の表紙 安西信行
『鋼鉄日記』/安西信行、竹書房。2015年3月27日刊。

安西信行さんの『烈火の炎』は、冒頭から烈火と土門の喧嘩を、派手な表情や落とし穴のギャグで見せています。
『鋼鉄日記』では、安西さん自身も漫画の登場人物になり、家族や仕事仲間と掛け合います。
二つの作品の場面を並べると、笑いを作る表情や動きと、日記漫画ならではの楽しさが見えてきます。

『烈火の炎』では、喧嘩の勢いが落とし穴の笑いへ

『烈火の炎』の第1話は、自称忍者の烈火と、烈火に挑む土門の対決から始まります。
拳を振るう土門と、飛び散る破片が大きく描かれ、烈火は身軽にかわします。
烈火が自分は忍者だと名乗る場面は、顔と手を大きく描いたコマで強調されています。

自分は忍者だと名乗り、顔と手が大きく描かれる烈火
『烈火の炎』其之一「忍と姫君」/安西信行、小学館。土門の拳をかわし、忍者と名乗る烈火。 出典

次のページでは、迫る土門が地面の穴へ落ちます。
烈火は顔を大きく崩して笑い、土門は落とし穴を作った烈火に怒ります。
強い拳を描いた場面から、罠に落ちた土門と、得意げな烈火のやり取りへ続くのです。
戦いの動きと、相手への反応の大きさが、同じ喧嘩の中にあります。

土門が地面の穴へ落ち、烈火が大きく崩した顔で笑う場面
『烈火の炎』其之一「忍と姫君」/安西信行、小学館。落とし穴に落ちる土門と、顔を崩して笑う烈火。 出典
落とし穴から出た土門が烈火へ怒り、烈火が忍者について語る場面
『烈火の炎』其之一「忍と姫君」/安西信行、小学館。落とし穴をめぐる土門と烈火の掛け合い。 出典

『鋼鉄日記』では、作者自身が誇張される

『鋼鉄日記』は、安西さんの日常を描いたエッセイ漫画です。
安西さんは、漫画家を休業していた時期から、再び仕事を始めるまでの話も描いています。

安西信行のエッセイ漫画『鋼鉄日記』の表紙
『鋼鉄日記』/安西信行、竹書房。2015年3月刊。 出典

第1話では、自作のキャラクターを相手に話す安西さんが登場します。
下ネタを話す安西さんにツッコミが入り、家では妻から何を描くつもりなのかと聞かれます。
安西さん自身の大きく開いた口や、妻の言葉に慌てる表情も、掛け合いの一部になっています。
長編の人物を動かしてきた作者が、今度は自分の顔まで崩して描いているのです。

声優の岡野浩介も、日記の掛け合いに登場する

安西さんが2014年に公開した『鋼鉄日記』の一部には、声優の岡野浩介さんが登場します。
岡野さんは、アニメ『烈火の炎』で主人公・烈火の声を担当した人です。
安西さんは、烈火の声を担当してもらって以来の付き合いだと紹介しています。

烈火の声を担当した岡野浩介を丸い頭と小さな体で描いた鋼鉄日記の公開抜粋
『鋼鉄日記』Twitter回の公開抜粋/安西信行、竹書房。2014年6月21日の本人投稿。 出典

岡野さんは、丸い頭と小さな体で、元気に挨拶する人物として描かれています。
続くコマで安西さんは、岡野さんの頭にハリセンが当たるやり取りを描いています。
作品を作るうえで出会った人が、今度は作者の日記の中で、コミカルな登場人物になっています。
『鋼鉄日記』が始まるまでの経緯を知ると、仕事を通じたつながりが、新しい漫画の中にも現れていることが分かります。

まとめ

『烈火の炎』の冒頭でも『鋼鉄日記』でも、人物の大きな反応が笑いを作っています。
『鋼鉄日記』では、その役を作者自身や、作品を通じて知り合った人たちも担います。
長編の作者の近況を知るだけでなく、作者も漫画の登場人物として楽しめるところに、この日記の面白さがあります。

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