椎名高志作品の「能力を仕事にする人」|美神と『絶チル』の違い

椎名高志の肖像、2024年グラニフ取材 椎名高志
椎名高志/2024年グラニフ取材。撮影:泉大悟。

『GS美神 極楽大作戦!!』と『絶対可憐チルドレン』には、特別な能力で事件を解決する人物たちが登場します。
美神令子は除霊事務所の経営者で、『絶チル』の薫・葵・紫穂は国家組織の一員として任務に出る子供です。
同じ作者の二作品でも、能力を持つ人の立場と、一緒に働く大人の役目が違います。

美神令子、横島忠夫、おキヌが並ぶGS美神のカラーイラスト
『GS美神 極楽大作戦!!』の美神・横島・おキヌ/椎名高志、小学館。カラーイラスト掲載:MANGA Watch。 出典

美神の仕事は、報酬と助手の給料まで笑いになる

『GS美神』第1巻の紹介で、除霊は経済活動を妨げる悪霊を退治するビジネスとして説明されています。
美神は自分の事務所を持ち、横島やおキヌを助手にして現場へ出ます。
世の中に危険な霊がいることが、腕のよい美神にとっては商売になるのです。

その仕事ぶりは、悪霊に勝つかどうかだけではありません。
美神が大金を稼ぐ一方、横島の給料は驚くほど安い。
依頼を受ける側と、助手として使われる側の違いまで、二人の掛け合いに入っています。

美神令子、横島忠夫、おキヌを描いたGS美神極楽大作戦第3巻の表紙
『GS美神 極楽大作戦!!』第3巻/椎名高志、小学館。 出典

第3巻では、商売敵の小笠原エミが好条件を示して横島を引き抜こうとします。
美神は横島にさらに安い時給を突きつけ、横島はエミのもとへ移ります。
横島がエミのもとから戻ってくると、美神は以前より5円だけ時給を上げます。
霊能力者同士の競争が、助手の取り合いや給料の話になっているところにも、『GS美神』らしい笑いがあります。

『絶チル』では、強い子供を支える大人が必要になる

『絶チル』の三人は、内務省の特務機関である超能力支援研究局、通称バベルに所属しています。
第1巻の紹介では、三人は10歳で、皆本光一が現場運用主任です。
念動能力、瞬間移動能力、接触感応能力を持つ三人が、皆本の指揮で難事件に取り組みます。

10歳の野上葵が登場する絶対可憐チルドレン第1巻の公開抜粋
『絶対可憐チルドレン』第1巻に登場する野上葵/椎名高志、小学館。 出典

美神は自分で仕事を引き受け、助手を雇う大人ですが、三人は大人の指揮と支援を受ける子供です。
三人の能力が高くても、それで学校生活や人との付き合いまでうまくいくわけではありません。
椎名は2024年の対談で、才能はあるが社会になじみにくい子供が、皆本に導かれて折り合いを付けていく話だと説明しています。

正式な週刊連載が始まる第2巻でも、バベルが三人の成長を心配していることが示されます。
三人が任務を成功させるだけでなく、その力を持ったままどう育つかが、皆本たち大人にとっての問題なのです。

所長と助手、指揮官と子供の掛け合い

『GS美神』では、美神の欲深さや横島の下心が、事務所の関係を面白くしています。
『絶チル』では、皆本が三人を指導する立場でありながら、その三人に振り回されます。
椎名は同じ対談で、大人が複数の女の子から一斉に文句を言われて困るような掛け合いを作りたかったとも話しました。

グラニフ取材で対談する椎名高志と石川祐
左が椎名高志、右が石川祐/2024年のグラニフ対談。撮影:泉大悟。 出典

美神と皆本は、どちらも仲間と事件の現場へ出る人物ですが、担う役目が違います。
事務所を率いる美神と、子供の力を生かしながら育てる皆本。
能力を使う場面に加えて、その人たちがどんな立場で顔を合わせるかが、二作品の会話や笑いを変えています。

まとめ

二作品では、能力を使って事件を解決する場面と、身近な人との掛け合いが一緒に描かれます。
所長と助手、子供と現場運用主任では、能力を持つ人物も、周りの人物も立場が違う。
美神が横島をこき使い、三人が皆本を困らせる姿まで読むと、能力の違いだけではない二作品の持ち味が見えてきます。

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