岩明均が語った一人作業の理由|『レイリ』で選んだ制作体制

第3回さいとう・たかを賞の2020年授賞式、集合写真 岩明均
2020年、第3回さいとう・たかを賞の授賞式。写真出典:さいとう・プロダクション。

岩明均さんは2020年の受賞コメントで、人に指示や指導をすることが得意ではなく、普段は一人で漫画を描いていると説明しました。
そのため、進行中の別の一作品を描くだけで手いっぱいになり、『レイリ』は初めから自分で漫画にすることは難しいと考えていました。

そこで岩明さんが書いた原作を、室井大資さんが漫画にし、編集者の沢考史さんが制作全体をまとめました。
一人で描く作家が、別の人と組んで完成させた作品です。

一人作業の理由は、人に指示することの難しさ

『ヒストリエ』第1巻の表紙
『ヒストリエ』第1巻/岩明均、講談社。 出典

岩明さんは『寄生獣』『ヒストリエ』など、物語と絵を自分で手がける作品を描いてきました。
岩明均さんの主な作品には、本人が漫画を描いたものと、原作を担当したものがあります。

2020年のさいとう・たかを賞の授賞式で、岩明さんは、かつて合計六人の漫画家のアシスタントをした経験があると話しています。
人に指示される立場ではチームで働けても、自分が漫画家になり、人を雇って指示することはうまくできなかったそうです。

岩明さんが自分に使った言葉は「一兵卒」でした。
漫画を描く仕事はできても、制作を率いる役割は得意ではなかった、という説明です。

『レイリ』は原作を完成させてから、漫画を任せた

『レイリ』第1巻の表紙
『レイリ』第1巻/原作:岩明均、漫画:室井大資、秋田書店。 出典

『レイリ』は、百姓の娘が武田信勝の影武者として生きる戦国時代の物語です。
表紙には、原作・岩明均、漫画・室井大資と記されています。

岩明さんの受賞コメントによれば、一人での作画はどうしても遅くなり、別の漫画を描いていると、もう一作品を自分で描く余力がありませんでした。
岩明さんが別の連載を描きながら『レイリ』の作画まで担うことは難しかったのです。

岩明さんはシナリオを完成させ、漫画家の人選を含む制作全体を沢さんに任せました。
沢さんは授賞式で、岩明さんが原作を書き続けた十二年と、完成後に室井さんが描くまでの二年を振り返っています。
原作ができればすぐ漫画になったわけではなく、描き手へつなぐまでにも時間がありました。

沢さんによれば、岩明さんとの仕事の関係は1990年の出会いから続いていました。
二人は、その後に『剣の舞』や『ブラック・ジャック~青き未来~』でも関わっています。
長く仕事をしてきた編集者が、完成した原作を次の描き手へつないだのです。

岩明均の読者だった室井大資が、漫画を描く側に回った

室井さんは、1990年に雑誌の紹介をきっかけに『寄生獣』を読み、それ以来、岩明さんの作品を好きでいたと語っています。
『レイリ』の脚本を受け取ったときには、何度も泣いたと振り返りました。
長く読んでいた作家の物語を、自分が漫画にする仕事になったのです。

沢さんは、室井さんが原作と向き合って漫画を描いた三年間も振り返っています。
室井さんの制作現場には、元さいとう・プロダクションのチーフスタッフもいました。
室井さんは、その人がいなければ『レイリ』の制作は回らなかっただろうと感謝しています。

『レイリ』の分業は、原作と漫画の二人だけで完結する形ではありませんでした。
沢さんが制作全体をまとめ、室井さんが漫画の制作を担い、その現場もスタッフに支えられていました。
岩明さんは、自分にはない室井さんの持ち味が発揮されたと評価しています。

『レイリ』第6巻の表紙
『レイリ』完結の第6巻/原作:岩明均、漫画:室井大資、秋田書店。 出典

『レイリ』は全6巻で完結しました。
一人で物語と絵を仕上げる岩明さんの作品とは違う形で、原作が読者へ届いたのです。

原作者・漫画家・編集者の三人が受賞した

第3回さいとう・たかを賞の2020年授賞式、集合写真
2020年、第3回さいとう・たかを賞の授賞式。写真出典:さいとう・プロダクション。 出典

2020年の第3回さいとう・たかを賞では、岩明さん、室井さん、沢さんの三人が表彰されました。
この賞は、シナリオと作画を分けて制作された優れた漫画を評価する賞です。

岩明さんは授賞式で、制作全体を沢さん、漫画の制作を室井さんに任せたことが、うまくいったと話しました。
一人で作業しているときにはない喜びを感じた、という言葉も残しています。

さいとう・たかをさんは、絵を描く才能と物語を作る才能は別であり、分業によってそれぞれを生かせるようにしたいと説明しました。
『レイリ』は、原作、絵、制作をまとめる仕事のそれぞれに担い手がいた作品でした。

まとめ

岩明均さんが一人で描く理由として語ったのは、自分が人へ指示することの難しさでした。
『レイリ』では、岩明さんが全員を率いるのではなく、制作全体を沢考史さん、漫画を室井大資さんが担いました。

この仕事で生まれたのは、岩明さんの物語を室井さんが漫画にする、本人の作画とは違う作品です。
岩明さんが自分で作画する作品に加えて、完成した原作を別の描き手へ渡す仕事からも、新たな漫画が読者へ届きました。
2020年のコメントからは、一人作業の難しさと、それを踏まえて選んだ共同制作の形が分かります。

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