『銀と金』の仕手戦で、銀二は、日本旭を支える帝日銀行を交渉相手に変える。
銀行の頭取・土門を味方につけ、持っている株を買い取らせる道を作った。
銀行の融資を止めようとした銀二が、最後には、その銀行から金を出させるのである。
なぜ作戦が変わり、それで勝負を終えられたのか。
梅谷の株、銀行の資金、不正を記録したテープがどうつながるかを追うと、この仕手戦の決着が分かりやすくなる。
梅谷は株を持っていても、買い続ける金が尽きる
日本旭の株を買い集めていたのは、丸宝グループの梅谷哲だ。
梅谷は、日本旭側に株を買い取らせることで利益を得ようとしている。
日本旭側が応じるまで買い集めを続けるには、さらに金が要る。
梅谷の手元には株があっても、買い続けるための資金が足りないのだ。

梅谷は借金を抱え、資金繰りに追い詰められている。
株を売って金を回収したい梅谷に対し、日本旭には、帝日銀行という資金の後ろ盾がある。
このまま株の買い集めを続けるだけでは、梅谷のほうが先に持ちこたえられなくなる。
銀二は梅谷の負債を引き受ける代わりに、仕手戦の主導権を得る。
そのうえで、日本旭への融資を止めるため、帝日銀行の弱みを探る。
日本旭側が長く抵抗できる理由に、手をつけるのだ。
銀行の不正は、株を買い取らせるための交渉材料になる
銀二が接触するのは、不正融資に関わる帝日銀行の行員・内村だ。
内村から調べを進めると、丸双不動産への融資と、政治家への資金の流れがつながる。

丸双不動産が帝日銀行から融資を受け、その金の一部が国会議員の海堂正行へ回る。
海堂は、帝日銀行頭取・土門の娘婿である。
土門は不動産会社への融資を経由して、身内の政治家へ金を流していた。

銀二がこの不正を追うのは、日本旭への融資を断つためだ。
銀行の弱みを押さえれば、株の買い集めだけでは動かなかった日本旭を、資金の供給元から追い込める。
土門たちの密談を記録したテープは、その要求を通すための材料になる。
捕まった銀二は、銀行から金を出させる交渉に切り替える
銀二たちは証拠を得るが、海堂が呼んだ暴力団によって捕らえられる。
テープを託されて逃げた森田は、梅谷を頼り、海堂たちを動かせる政治家・伊沢敦志に助けを求める。
伊沢は銀二たちの解放を求める連絡をする。

戻ってきた銀二は、監禁中に土門たちとの交渉を進めていた。
銀二が提案したのは、日本旭から共同で金を取ることだ。
銀行の融資を止めて日本旭を弱らせる作戦から、銀行の融資で日本旭に株を買い取らせる作戦へ変えている。
土門たちにも利益を残すことで、対立していた相手を取引へ引き入れたのである。
銀二の解放につながったのは、この交渉だった。
森田が伊沢に救出を頼む一方で、銀二は、自分で脱出の条件をまとめていたのである。
森田も、伊沢に聞かせるテープを用意する際、二台の機器を使って証拠を手元に残している。
録音した内容を相手へ渡しきらず、銀二たちが使える材料を保った。

株を買い戻す日本旭が、最後の負担を引き受ける
決着では、帝日銀行が日本旭に融資し、日本旭はその金を使って銀二たちの株を買い取る。
株は銀二たちから日本旭へ移り、買い取り代金は日本旭から銀二たちへ移る。
日本旭には、銀行から金を借りて買い取る負担が残る。
銀二は、土門や伊沢にも利益を得られる形で話をつける。
日本旭を支えていた銀行が、最後には、株を買い取らせる側にも回るのだ。
日本旭側は、銀行の力を頼みに抵抗し続けられる立場ではなくなる。
この取引で、銀二自身が得る儲けは大きくない。
銀二が重く見るのは、土門や伊沢との関係を作れたことだ。
今回の株の儲けを分けることで、次の大きな仕事につながる相手を得る。
銀行の頭取と政治家に利益を残す取引が、銀二の次の仕事への足場にもなる。
銀二が自分の取り分を譲れるのは、この一度の勝負の先にも、土門と伊沢の力を使うつもりがあるからだ。


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