福本伸行はなぜ建設会社を辞めた?漫画家を選んだ理由とデビューまで

漫画家を目指した理由を話す福本伸行。読売テレビの対談場面 漫画家・作者
福本伸行、『川島・山内のマンガ沼』/読売テレビ。2024年公開の対談より。

福本伸行さんは、工業高校を卒業して入った建設会社を、約3か月で辞めています。
自分が情熱を持てる仕事に力を注ぎたいと考え、漫画家を目指しました。
漫画家を目指してからは、持ち込みで修業を勧められ、かざま鋭二さんのもとで絵を学びます。
仕事場を離れた後も、自分の作品を描いて持ち込みを続け、読み切りでデビューしました。

建設会社で考えた、何に力を注ぐか

福本さんは、横須賀の工業高校から建設会社へ就職しました。
建設の仕事そのものを否定していたのではなく、そこで上を目指すための勉強や努力に、自分は情熱を持てるのかと考えたのです。
そのときの思いを、『川島・山内のマンガ沼』での対談で「頑張りたいもので頑張ろう」と振り返っています。

漫画家を目指した理由を話す福本伸行。読売テレビの対談場面
漫画家を目指した理由を語る福本伸行。『川島・山内のマンガ沼』/読売テレビ。2024年公開の対談より。 出典

候補は漫画家だけではありませんでした。
福本さんは2020年の本人インタビューでも、歌手や小説家などの仕事を眺め、自分には漫画家が向いていそうだと考えたと説明しています。
子どもの頃から短い漫画を描くことは好きでした。
専門的な描き方は、持ち込みやアシスタントの仕事を通して学んでいくことになります。

最初の持ち込みは、読み切りとして終わっていなかった

講談社へ持ち込んだのは、約32ページの剣道漫画でした。
強そうな人物が登場しながら、その活躍を描く前に続きへ進む構成で、一話で完結していません。
スクリーントーンも知らず、印刷された漫画の薄い色をまねて、薄墨で塗っていたと福本さんは話しています。

最初に持ち込んだ約32ページの漫画について語る福本伸行
最初の持ち込み原稿について語る福本伸行。『川島・山内のマンガ沼』/読売テレビ。 出典

編集者からは、アシスタントになって絵を学ぶことを勧められました。
福本さんは、かざま鋭二さんの仕事場に連絡し、原稿を持って会いに行きます。
漫画家を目指す気持ちと、掲載できる漫画を描く力の間には、まだ距離があったのです。

かざま鋭二のもとで修業し、独り立ちする

かざまさんのもとで、福本さんは約1年半、アシスタントを務めました。
ベタやホワイト、トーンといった仕上げに加え、背景を描く経験も積みます。
一方、絵の上達が遅かったため、かざまさんから別の仕事も考えたほうがよいと言われ、仕事場を離れることになりました。

福本さんの回想では、引っ越しの荷物を運んでくれたのも、かざまさんでした。
その夜、新しく借りたアパートで日付が変わると、福本さんは二十歳の誕生日を迎えます。
福本さんは、ここから漫画家になるために頑張ろうと決意したと話しています。
そのとき鼻血が出たという出来事も、対談で振り返っていました。

アシスタントを辞めて二十歳を迎えた夜を語る福本伸行
仕事場を離れた夜を振り返る福本伸行。『川島・山内のマンガ沼』/読売テレビ。 出典

読み切りを描き続けて、デビューへ

アシスタントを辞めた後、福本さんは新聞配達をしながら漫画を描き、持ち込みを続けます。
編集者の指摘を受けて直し、次の作品へ進むうちに、少しずつ手応えを得ていきました。
『よろしく!純情大将』を持ち込んだときには、『チャンピオン』の副編集長から面白いと評価されます。
この作品で、1980年に『月刊少年チャンピオン』からデビューしました。

後年の福本さんが、自分の仕事の土台として挙げるのは、この頃から重ねた読み切りの経験です。
2023年の「40’sランドスケープ」インタビューでは、絵で仕事を取ることが難しく、自分で話を作って読み切りを描いた経験が、物語を作る力を高めたと説明しています。

カイジ第1巻を手にする福本伸行。2023年の本人取材写真
『カイジ』第1巻を手にする福本伸行。モーニング40周年インタビュー(2023年)、撮影:柏原力/講談社。 出典

一話で終わる漫画なら、その一話の中で読者に面白さを届けなければなりません。
福本さんは、その難しい仕事を繰り返し、やがて『天』『銀と金』『カイジ』などの連載を描く作家になりました。
最初の持ち込みでは話を完結させていなかった福本さんが、一話で読ませる力を鍛えていったのです。

まとめ

福本さんが選んだのは、自分がやりたい仕事に努力を向ける生き方でした。
その努力は、修業先を離れた後も、読み切りを一本ずつ作る形で続きます。
本人の回想をつなぐと、後の福本漫画を支える話作りは、絵の弱さを抱えながら仕事を得ようとした日々の中で育ったものだと分かります。

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