和月伸宏さんが、漫画家生活で最も「完璧」に描けたワンシーンとして挙げたのは、『るろうに剣心』第148幕の志々雄真実の場面です。
京都編の決着後、地獄に落ちた志々雄が、駒形由美と佐渡島方治を従えて歩き出す。
和月さんにとって特別だったのは、その情景と台詞を、迷わず原稿に描き出せた感覚でした。
志々雄が去った後にも、志々雄らしさを描く
集英社の「マンガ家が選ぶ思い出の一話」で、和月さんは京都編のエピローグに当たる第148幕を選びました。
志々雄は剣心との戦いに敗れて命を落としています。
ところが、この話では地獄に落ちた後も、かつての勢いを失っていません。
話の前半では、地獄で志々雄を見た方治が戸惑います。
そこへ由美と志々雄が現れ、方治を連れて歩き始める。
志々雄は、自分たちが地獄に来たことを嘆くのではなく、次は地獄を奪うつもりだと告げます。


「完璧」だったのは、絵と台詞が迷わず出た感覚
和月さんは、この場面を選んだ理由として、地獄でも威勢を変えず、伴侶と部下を連れて国盗りを宣言する志々雄の姿を挙げています。
志々雄の敗北を描いた後に、志々雄らしい振る舞いをもう一度見せる場面です。
その結末について、和月さんは頭に浮かんだ情景と台詞を、悩んだり迷ったりせず原稿に出せたと振り返りました。
本人が「完璧」と呼んでいるのは、第148幕の全ページに点を付けた評価ではありません。
このワンシーンを描いたときの、頭の中のものが原稿になる手応えです。
和月さんは、このときの感覚を唯一無二だったと語っています。


今も、もう一度あの感覚を求めて描いている
和月さんは、あのときの感覚をもう一度味わえないかと思いながら、今も苦労して漫画を描いているとコメントしています。
代表作の名場面を選ぶ企画でありながら、過去の成功だけを語って終わらない言葉です。
読者が完成した場面として見ているものを、和月さんは、もう一度味わいたい制作の瞬間としても覚えています。
まとめ
和月さんが「完璧」と呼んだのは、志々雄が由美と方治を従え、地獄での国盗りを宣言して歩き去るワンシーンです。
情景と台詞が迷わず原稿になった感覚を、本人は特別なものとして覚えています。
完成した一場面を誇りに思いながら、次の原稿でも同じ手応えを探す。
その両方が、作者の短いコメントから伝わってきます。


コメント