『ぼくの地球を守って』のフィクション宣言は、漫画の前世を、自分自身の現実と重ねる読者に向けて、日渡早紀さんが創作であるとはっきり伝えた文章です。
花とゆめコミックス第8巻の欄外に、作者自身の言葉で書かれています。
その前には、第7巻へ注意書きを入れる対応もありました。
日渡さんは、作品を楽しむ読者の気持ちを冷ましてしまわないか迷っていたと、2022年のインタビューで振り返っています。
7巻から8巻へと進んだ経緯をたどると、宣言を書くまでの迷いも分かります。

漫画の仲間探しが、読者自身の話になっていった
『ぼくの地球を守って』は、月で暮らしていた前世の記憶を持つ人々が、地球で再会していくSF漫画です。
作中には、前世の記憶を共有する仲間を、雑誌への投稿で探す展開があります。

連載が進むにつれ、日渡さんのもとには、自分も作中の前世の人物ではないかと考える手紙が届くようになりました。
漫画の人物の記憶を、自分にもある記憶のように受け取る読者がいたのです。
日渡さんは、この反応を予想していなかったと語っています。
ただ、そこで作品は作り話だと告げると、読者が楽しむ気持ちに水を差すのではないか。
日渡さんは、現実と創作が混ざることを心配しながら、どう伝えるかに迷っていました。
先に第7巻へ、担当編集者が注意書きを入れた
第8巻の宣言より前に、第7巻の冒頭には注意書きが入りました。
担当編集者が、まずここで作品と実在の人物や事件は関係がないと示し、様子を見ようと提案しました。

掲載された文は、この作品がフィクションであることを明記しています。
8巻で日渡さん自身が語りかける前に、すでに作品と現実の区別を伝える対応があったのです。
第8巻では、作者自身の言葉で伝えた
続く第8巻では、日渡さんが欄外の「1/4のたわごと」に宣言を書きました。
物語は日渡さんの頭の中で組み立てた創作であり、実際にあった話を漫画にしたものではない、と明言しています。

定型的な注意書きだけでなく、漫画を描いた本人が、いつもの読者向けの欄から直接呼びかける形です。
空想の中だからこそ展開できる話だという説明も添えられていました。
作者の言葉で、漫画の出来事を現実の記憶として受け取らないよう伝えたのです。
徳島の事件より前から、宣言を相談していた
2022年のインタビューでは、1989年8月に徳島で起きた「自殺ごっこ」の事件が、宣言に影響したのかと尋ねられています。
日渡さんと担当編集者は、第7巻が出た1989年7月ごろから、作者自身がはっきり警告を書いたほうがよいのではないかと話していました。
日渡さんによると、自分で宣言を書こうとした時期と、事件の時期が重なったのだといいます。
事件がなくても8巻には書いたと思う、とも述べています。
また、日渡さんは、作中には自ら命を絶つと転生できないという設定を入れていたことにも触れました。
物語の中に歯止めを用意していても、現実と結び付けて読む人への伝え方は難しかったのです。

この取材で、日渡さんは作品が事件に影響したかどうかを断定していません。
日渡さんが語った宣言の背景には、届いた手紙と、事件より前からの担当との相談がありました。
まとめ
日渡さんは、読者の楽しみを冷ましたくないと迷いながらも、作品が創作であることを伝えました。
7巻の注意書きから8巻の自筆の文章へ進んだ経緯には、漫画に夢中になった読者へ、どう言葉を届けるか考えた作者の姿が表れています。

コメント