『闇のアルバム/楳図かずお作品集』は、楳図かずおさんが1975年に発表した初のソロ・アルバムです。
楳図さんは、作詞・作曲・歌唱だけでなく、ジャケットの絵も手掛けました。
『洗礼』『おろち』『漂流教室』など、漫画と同じ題名の曲が並ぶ一枚です。

漫画の仕事を減らして、一曲ずつ作り始めた
楳図さんは2009年のインタビューで、連載の仕事を絞った時に、音楽をやってみたくて始めたと話しています。
多くの連載を抱えていた頃には、音楽を聴いたりテレビを見たりする時間もなかったそうです。
始めたのは、一日一曲ずつ詞を書くことでした。
その詞に曲を付け、ピアノを弾きながら歌い、テープに録音していきます。
楳図さんは、作詞には漫画を描く時と通じる感覚があり、あまり抵抗はなかったと振り返っています。

酒井政利へ持ち込み、漫画の曲を新しく書く
曲ができると、楳図さんはレコード会社に持ち込もうと考えました。
選んだのは、郷ひろみさんや山口百恵さんらを手掛けていたプロデューサーの酒井政利さんです。
どうせ聞いてもらうなら、ヒットを出している人に聞いてもらいたいという考えでした。
2023年の再発時に寄せた本人の回想によると、デモテープは担当編集者を通して酒井さんへ渡りました。
曲にドラムを足して社内で流している、と返事が届き、後にレコードの話へ進みます。
そこで求められたのは、持ち込んだ歌をそのまま出すことではなく、描いている漫画のテーマソングのような曲を作ることでした。
楳図さんは、『洗礼』や『漂流教室』などをイメージした曲を新しく書いています。
最初から漫画のアルバムを企画していたというより、歌を作って持ち込んだ先で、漫画を生かすレコードの形が決まったのです。

録音前には、伴奏に合わせて歌う練習期間もありました。
楳図さんは約三か月稽古し、気に入っている「へび少女」は一度の録音でOKになったと回想しています。
詞や曲を作るだけでなく、自分の声で届ける準備も重ねていました。
2011年には第二弾、2023年には初作のLP再発
1975年の一枚に続き、2011年には『闇のアルバム2』が発表されました。
「チキンジョージ」「14歳」などが入り、ほぼ全曲を楳図さん自身が作詞・作曲しています。
その間にも、郷さんや近田春夫さんへの作詞、ライブなどの音楽活動がありました。

さらに、2023年には第一作がアナログ盤で再発されます。
楳図さんは再発時、漫画と同じ曲名でも、漫画とは違う角度や解釈で楽しめると話しています。
原作の筋をそのまま歌うことだけが、漫画と音楽のつながりではなかったのです。
まとめ
『闇のアルバム』は、漫画の題名を並べた企画である前に、楳図さんが自分で詞を書き、曲を付け、歌った仕事から生まれました。
そこへ漫画を題材にする提案が加わり、漫画を別の視点で歌にする一枚になっています。
漫画家の名前で出したレコードにも、漫画を描く時とは別の、歌い手としての試行錯誤がありました。


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