『闇のアルバム』とは?楳図かずおが自作の歌をレコードにするまで

蝶が舞う室内と赤い床の少女を描いた闇のアルバムのジャケットと黒いレコード 楳図かずお
『闇のアルバム/楳図かずお作品集』、2023年再発LPの案内画像。ジャケット画:楳図かずお/ソニーミュージック。

『闇のアルバム/楳図かずお作品集』は、楳図かずおさんが1975年に発表した初のソロ・アルバムです。
楳図さんは、作詞・作曲・歌唱だけでなく、ジャケットの絵も手掛けました。
『洗礼』『おろち』『漂流教室』など、漫画と同じ題名の曲が並ぶ一枚です。

蝶が舞う室内と赤い床の少女を描いた闇のアルバムのジャケットと黒いレコード
『闇のアルバム/楳図かずお作品集』、2023年再発LPの案内画像。ジャケット画:楳図かずお/ソニーミュージック。 出典

漫画の仕事を減らして、一曲ずつ作り始めた

楳図さんは2009年のインタビューで、連載の仕事を絞った時に、音楽をやってみたくて始めたと話しています。
多くの連載を抱えていた頃には、音楽を聴いたりテレビを見たりする時間もなかったそうです。

始めたのは、一日一曲ずつ詞を書くことでした。
その詞に曲を付け、ピアノを弾きながら歌い、テープに録音していきます。
楳図さんは、作詞には漫画を描く時と通じる感覚があり、あまり抵抗はなかったと振り返っています。

赤いカーテンを背に、赤白のシャツ姿で片手を顔に添える楳図かずお
2023年の再発案内に掲載された楳図かずおさん/ソニーミュージック。 出典

酒井政利へ持ち込み、漫画の曲を新しく書く

曲ができると、楳図さんはレコード会社に持ち込もうと考えました。
選んだのは、郷ひろみさんや山口百恵さんらを手掛けていたプロデューサーの酒井政利さんです。
どうせ聞いてもらうなら、ヒットを出している人に聞いてもらいたいという考えでした。

2023年の再発時に寄せた本人の回想によると、デモテープは担当編集者を通して酒井さんへ渡りました。
曲にドラムを足して社内で流している、と返事が届き、後にレコードの話へ進みます。

そこで求められたのは、持ち込んだ歌をそのまま出すことではなく、描いている漫画のテーマソングのような曲を作ることでした。
楳図さんは、『洗礼』や『漂流教室』などをイメージした曲を新しく書いています。
最初から漫画のアルバムを企画していたというより、歌を作って持ち込んだ先で、漫画を生かすレコードの形が決まったのです。

赤と青の壁の部屋で、花束を持つ少女と扉の向こうの大きな顔を描いたジャケットの絵
『闇のアルバム』ジャケット裏面のイラスト/楳図かずお。2023年再発案内掲載、ソニーミュージック。 出典

録音前には、伴奏に合わせて歌う練習期間もありました。
楳図さんは約三か月稽古し、気に入っている「へび少女」は一度の録音でOKになったと回想しています。
詞や曲を作るだけでなく、自分の声で届ける準備も重ねていました。

2011年には第二弾、2023年には初作のLP再発

1975年の一枚に続き、2011年には『闇のアルバム2』が発表されました。
「チキンジョージ」「14歳」などが入り、ほぼ全曲を楳図さん自身が作詞・作曲しています。
その間にも、郷さんや近田春夫さんへの作詞、ライブなどの音楽活動がありました。

少女ととぐろを巻くへび、赤白の渦を描いた闇のアルバム2のジャケット
『闇のアルバム2』のジャケット/楳図かずお。画像:一般財団法人UMEZZ。 出典

さらに、2023年には第一作がアナログ盤で再発されます。

楳図さんは再発時、漫画と同じ曲名でも、漫画とは違う角度や解釈で楽しめると話しています。
原作の筋をそのまま歌うことだけが、漫画と音楽のつながりではなかったのです。

まとめ

『闇のアルバム』は、漫画の題名を並べた企画である前に、楳図さんが自分で詞を書き、曲を付け、歌った仕事から生まれました。
そこへ漫画を題材にする提案が加わり、漫画を別の視点で歌にする一枚になっています。
漫画家の名前で出したレコードにも、漫画を描く時とは別の、歌い手としての試行錯誤がありました。

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