楳図かずおの絶叫はなぜ怖い?「ギャーッ」と顔、コマの重なり

口と目を大きく描いた神の左手悪魔の右手の表紙 楳図かずお
『神の左手悪魔の右手』の書影/楳図かずお。画像:一般財団法人UMEZZ。

楳図かずおさんの漫画の絶叫は、文字と一緒に、開ききった口や目、顔のしわ、周囲へ走る線が飛び込んできます。
短い叫び声に、怖がっている人の表情と、続けて読むコマの勢いが重なる表現です。

口と目を大きく描いた神の左手悪魔の右手の表紙
『神の左手悪魔の右手』の書影/楳図かずお。画像:一般財団法人UMEZZ。 出典

叫ぶ顔と吹き出しを、一緒に見せる

『神の左手悪魔の右手』では、驚いた顔のすぐそばに、先端のとがった吹き出しが置かれています。
大きく開いた口、見開いた目、顔のまわりに広がる線が、叫びの文字と同じコマに入っています。

浴室の前で驚き、口を大きく開けて叫ぶ少年の連続したコマ
『神の左手悪魔の右手』第2巻、1997年版92〜93頁/楳図かずお・小学館。前川修「楳図マンガとマンガの恐怖」掲載図版。 出典

文字で叫び声を表し、目や眉、頬の線でも驚きを伝えています。
顔から放射する線と、吹き出しのとがった輪郭まで重なり、叫びの激しさが目にも伝わってきます。

叫ぶ顔を、次のコマでも見せる

別の見開きでは、少年が叫び、次のコマでは別の人物の口も開きます。
驚いた顔を繰り返しながら、見る向きや、顔を描く大きさが変わっていきます。

少年や家族の叫ぶ顔が連続して描かれた見開き
『神の左手悪魔の右手』第3巻、1997年版73〜74頁/楳図かずお・小学館。同論考の掲載図版。 出典

読者は一つの叫びを読んだ後も、次のコマでまた叫ぶ顔に出会います。
声を何度も書くことと、表情を何度も見せることが組み合わさり、動揺が一度の驚きで終わらないページになっています。

帽子と赤白の上着を着てテーブルに座る楳図かずお
2016年公開の本人インタビュー掲載写真/TOCANA編集部撮影。 出典

大きな口は、描くときのバランスも変える

2002年の金沢美術工芸大学での講演では、『まことちゃん』の模写が難しい理由も話題になりました。
楳図さんは、まことの表情が極端なことを挙げ、大口を開くと顔のバランスが崩れやすいと説明しています。

幼稚園児のまことを描いたまことちゃん第1巻の表紙
『まことちゃん 第1巻』の書影/楳図かずお。画像:一般財団法人UMEZZ。 出典

楳図さん自身も、まことの口を閉じさせようとすると、顔の中に空白が多くできて戸惑うそうです。
これは笑わせる漫画についての話ですが、口の開き方で顔全体が変わることを、描き手自身の言葉から知ることができます。

恐怖を感じさせる題材そのものについては、楳図さんの恐怖表現の広がりでも紹介しています。
人物の顔や影を生かした怖さは、『ウルトラマン』を描いた仕事にも見られます。

まとめ

楳図さんの絶叫では、声を表す文字を読みながら、怖がる顔も何度も見ることになります。
「ギャーッ」という短い言葉が、線と表情、コマの連なりによって、すぐには通り過ぎられない迫力を持つのです。

この記事もおすすめ

コメント

アクセス解析について
タイトルとURLをコピーしました