楳図かずおさんの『ウルトラマン』が独特なのは、限られた資料を想像で補い、着ぐるみの質感も自分で変えて描いたからです。
楳図さんは、ヒーローを描く仕事でも、自分の漫画を読むファンが期待する怖さを残そうとしました。

背中の写真がなく、想像で描くしかなかった
漫画の連載が始まったのは、1966年のテレビ放送開始に先立つ時期です。
2009年のインタビューで、楳図さんは台本と数枚の写真を受け取り、担当編集者とTBSでバルタン星人の回を一度試写した、と振り返っています。
見せてもらった資料には、ウルトラマンの背中がありませんでした。
別の怪獣にも、横からの姿しか分からないものがあったそうです。
楳図さんは、分からない部分を想像して描いていきました。
編集部からは、ウルトラマンを最初から登場させるようにも求められています。
テレビの物語を漫画向けに組み直す仕事は、絵だけでなく、話の運び方にも及んでいました。

着ぐるみのしわを写さず、硬い質感へ変えた
資料不足は、楳図さんが独自に描く余地にもなりました。
楳図さんは後年、着ぐるみをそのまま写さずに済んだ点を、むしろ良かったと捉えています。
2016年のインタビューでは、ウルトラマンを硬質な感じに変えた、と具体的に話しています。
着ぐるみにできるしわを見て、元のデザインのイメージまでしわだらけではないはずだ、と考えたためでした。

楳図さんは、資料が少なかったことで、怪獣もウルトラマンも着ぐるみらしさを離れて描けたと振り返っています。
正面の写真から分からないところを補うだけでなく、目に見えた質感にも手を加えていたのです。
怪獣だけでなく、人間の場面にも怖さがある
楳図さんは、当時の自分がホラーで読まれていたことを踏まえ、『ウルトラマン』でも怖い手触りを外したくなかったと話しています。
別の題材を引き受けても、従来の読者が楽しめる漫画にしようとしていました。

人間の目つきや、顔に落ちる濃い影にも、不穏さがあります。
そして、バルタン星人が人をつかむ場面では、体やはさみに細かな線が入り、人物と怪獣の大きさの差が強く出ています。

『へび女』や『おろち』などで描いた怖さの広がりは、楳図さんの恐怖表現の歩みでも紹介しています。
まとめ
楳図版では、テレビで知っているヒーローや怪獣を題材にしながら、怪奇漫画を読むような怖さも味わえます。
同じ登場人物でも、描く人によってこれほど雰囲気が変わるところに、楳図さんの『ウルトラマン』を読む面白さがあります。


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