志々雄と戦うため、剣心は師匠の比古清十郎に飛天御剣流の奥義を求める。
剣心は奥義を得るためなら死も恐れないと告げたが、比古はその答えに納得しなかった。
比古が問題にしたのは、人を守ろうとする剣心が、自分自身の命を軽く扱っていることだった。
比古は、剣心を待つ薫のことを先に話していた
奥義の伝授を始める前に、比古は剣心へ二つのことを告げる。
剣心一人の犠牲で明治という時代を守りきれるほど、時代は軽くない。
そして、一人の幸福も軽くない。
剣心に会うため京都まで来た薫は、剣心がここで死ねば悲しむ。

剣心が誰かを守ろうとする気持ちを、比古は否定していない。
薫たちの話を聞いてから、比古は剣心に奥義を教えると決めている。
だが、剣心が守ろうとする人の中には、剣心と生きて会いたい人もいる。
比古は「大勢を守るためなら自分は死んでいい」という剣心の考えに、その薫の幸福が入っていないことを指摘した。
剣心は試練の意味を、まだ受け止めていなかった
比古が放つ九頭龍閃を破るには、それより速く刀を抜く必要がある。
剣心は奥義の形を見抜き、命を落とすことも恐れずに挑むと答える。
しかし比古は、剣心にまだ欠けているものがあると言い、一晩考える時間を与えた。

剣心は志々雄を止めたいし、人斬りに戻りたくもない。
その目的が切実だからこそ、命を捨てるという言葉は覚悟に聞こえる。
けれども比古は、剣心が過去に奪った命を悔やむあまり、自分の命まで軽く見ていると気づいていた。
死を恐れないという剣心の返事は、比古が先に話した薫の幸福への答えになっていなかった。
「死んでもいい」が「まだ死ねない」に変わる
翌朝になっても、剣心は欠けているものを言葉にできない。
比古が本気で九頭龍閃を放ち、死が目前に迫ったとき、剣心は自分を待つ人たちを思い出す。
剣心は「まだ死ねない」と叫び、天翔龍閃を放った。

比古はその後、剣心が生と死の間で見つけたものを「生きようとする意志」と呼ぶ。
奥義の形を理解しただけでは、剣心はまだその技を出せなかった。
自分はまだ死ねないと強く思った瞬間に、剣心は師の一撃を破る。

比古自身も奥義の伝授で傷を負っている。
危険を引き受けることまで、比古が否定したわけではない。
比古が剣心に認めさせたかったのは、守る相手の命と同じように、剣心自身の命も大切だということだ。
剣心を待つ薫たちがいるからこそ、「命を捨てる覚悟」だけでは足りなかった。


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