『エリア88』の機体は実物どおり?新谷かおるが漫画のために変えたもの

戦闘機の操縦席に座る風間真と、空を飛ぶ機体を描いた「エリア88」のカラーイラスト。 新谷かおる
新谷かおる『エリア88』/『新谷かおるARTWORKS 戦闘機から美少女まで』(玄光社)掲載、©新谷かおる。

新谷かおるさんは、『エリア88』のカラー原画で、F-20タイガーシャークの操縦席にアレンジを加えたと明かしています。
細かく描きたくて、異なる会社のものを組み合わせたのだそうです。
航空機を描き込む楽しさの中には、漫画のために実物から離れる工夫もありました。

F-20の操縦席に加えたアレンジ

2021年の本人インタビューで、新谷さんは画集に収めた『エリア88』のカラー原画を振り返りました。
主人公・風間真が乗るF-20の操縦席を細かく描きたくなり、別の会社のものも組み合わせた絵があると説明しています。

戦闘機の操縦席に座る風間真と、空を飛ぶ機体を描いた「エリア88」のカラーイラスト。
新谷かおる『エリア88』のカラー原画。2021年の取材で、F-20の操縦席のアレンジに言及/『新谷かおるARTWORKS 戦闘機から美少女まで』(玄光社)掲載、©新谷かおる。 出典

新谷さんは、この工夫を漫画だからこそできる「ウソ」と呼びました。
忙しい連載の合間にも、楽しみながらカラー原画を描いていたといいます。
計器や装置の描き込みは、そのまま実機の設計を写した結果とは限らなかったのです。

古書店で輸入書を探し、飛行機の姿を集めた

『エリア88』の連載当時は、欲しい機体の姿をすぐに映像で確かめられる時代ではありませんでした。
2023年のインタビューでは、軍用機の資料を集めるため、古書店で輸入書籍を探していたと振り返っています。

帽子と眼鏡を着け、マイクで話す新谷かおるさん。2026年4月26日の上映イベント。
新谷かおるさん。2026年4月26日、池袋・新文芸坐の上映イベントで/掲載:HOBBY Watch。 出典

資料探しに苦労した新谷さんは、同じ取材で、事実に忠実に描くことが漫画の正解とは限らないとも話しました。
新谷さんが例に挙げたのが、雨を降らせる演出でした。

雨を降らせて、パイロットの心情を伝える

新谷さんが挙げたのは、雨の中を飛ぶ姿のほうが、パイロットの気持ちを伝えられる場合です。
機種の性質と天候の組み合わせに矛盾が生じるとしても、漫画では有効な演出になり得ると説明しています。

操縦席では細部を描きたい、雨の例では人物の感情を伝えたいという狙いがありました。
新谷さんは、絵で見せたいものに合わせて、実物をなぞるだけではない描き方を選んでいます。

機体の顔ぶれも、描きたい世界に合わせた

『エリア88』には、多くの種類の飛行機が登場します。
新谷さんは、好きな飛行機に乗れる世界を思い描き、傭兵それぞれに似合う機体を用意しました。

空を飛ぶF-8Eクルセイダーと、操縦する風間真を描いたエリア88のカラー原画
新谷かおる『エリア88』、風間真とF-8Eクルセイダー/『新谷かおる航空機グラフィティ 著者が語るビジュアルガイド』(玄光社)掲載、©新谷かおる。 出典

新谷さん自身、これほど多様な機体が集まる基地には、現実なら整備などの問題があると認めています。
そのうえで、娯楽として自分の好きな世界を描いたと語りました。
機体をキャラクターとして描く教えを受け継いだ新谷さんにとって、どの飛行機を登場させるかも、人物を描く仕事とつながっていました。

新谷さんの航空機画と、そうした描き方についての話は、『新谷かおる航空機グラフィティ 著者が語るビジュアルガイド』にまとめられています。

操縦席の風間真を載せた「新谷かおる航空機グラフィティ 著者が語るビジュアルガイド」の表紙。
『新谷かおる航空機グラフィティ 著者が語るビジュアルガイド』表紙/玄光社、2023年刊、©新谷かおる。 出典

まとめ

新谷さんの航空機画には、資料を探して機体を知ろうとした仕事と、物語のために絵を変える工夫が、一緒にあります。
細かく描かれた操縦席も、実物に近づけるためだけのものではなかったのです。

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