『るろうに剣心』志々雄は死んでも何を北海道編に残したのか

志々雄の無限刃を継ぐ明日郎と剣心が描かれた北海道編第1巻表紙 るろうに剣心
『るろうに剣心 北海道編』第1巻/和月伸宏・黒碕薫・集英社

志々雄真実は京都で死んだ。
それでも北海道では、志々雄の刀を持つ明日郎、かつての部下・宗次郎、志々雄一派に家族を殺された栄次が、剣心の近くに集まる。
志々雄の影響は、後継者が誰かという問いだけでは捉えられない。
刀を受け取った者と、志々雄の考えに答えを出せずにいる者、志々雄一派に人生を壊された者では、残されたものが違うからだ。

弱肉強食を語る志々雄真実の原作コマ
『るろうに剣心』京都編/和月伸宏・集英社

家族を奪われた栄次と、志々雄に育てられた宗次郎

志々雄の「弱肉強食」が残したものを最もはっきり見せるのは、宗次郎と三島栄次の再会だ。
京都へ向かう途中、剣心は志々雄一派に占領された新月村で栄次と出会う。
志々雄の部下に両親と兄を殺された栄次は、元十本刀を許していない。

元十本刀に怒りを向ける三島栄次の原作場面
『るろうに剣心 北海道編』第19幕/和月伸宏・黒碕薫・集英社

北海道で宗次郎たちを前にした栄次は、銃を向ける。
第19幕の終わりでは宗次郎を撃つように見えるが、次の第20幕で栄次が撃った相手は劍客兵器の凍座だと分かる。
栄次は目の前の任務を優先して元十本刀と行動を共にする一方、恨みを捨てたわけではない。
志々雄が死んでも、志々雄一派が栄次にしたことは消えない。

宗次郎と向き合う三島栄次の原作場面
『るろうに剣心 北海道編』第19幕/和月伸宏・黒碕薫・集英社

宗次郎は栄次を力の弱い相手と見ながらも、志々雄の信念が正しかったかどうか、一緒に答えを探そうと語る。
京都で剣心に敗れた宗次郎は、志々雄の言葉を捨てて別人になったわけではない。
かといって、かつて教えられた言葉を栄次に押しつけて、この対話を終わらせてもいない。
宗次郎にとって志々雄の信念は、従えば済む答えから、確かめなければならない問いへ変わっている。

志々雄の言葉で育った宗次郎と、その言葉の下で家族を失った栄次が、同じ問いを別の側から抱えている。

同じ刀を持ち、違う側で戦う明日郎

志々雄の刀・無限刃は、北海道編で明日郎の手にある。
志々雄の部隊にいた明日郎は、刀を抜き、志々雄の技である焔霊まで使う。
物としても技としても、志々雄の力が次の世代へ残ったことは確かだ。

無限刃を抜いて現れる長谷川明日郎の原作場面
『るろうに剣心 北海道編』第59幕/和月伸宏・黒碕薫・集英社

ただ、明日郎は志々雄の国盗りを引き継ぐために北海道へ来たのではない。
明日郎は神谷道場に迎えられ、剣心たちと旅をしている。
無限刃を持つ明日郎を、志々雄の思想まで受け継いだ人物と決めることはできない。
志々雄の刀が剣心の側にあるからこそ、その刀を何のために振るうかが問題になる。

かつて志々雄のために戦った十本刀も、北海道では斎藤の呼びかけで剣心たちと劍客兵器に立ち向かう。
剣心と宗次郎が組み、左之助と安慈が組む場面まである。
宗次郎は志々雄の下で剣心と戦ったが、北海道では剣心と並んで戦う。
志々雄に従った過去が、宗次郎の次の戦いの相手まで決めてはいない。

元十本刀の宗次郎と剣心が並ぶ北海道編第9巻表紙
『るろうに剣心 北海道編』第9巻/和月伸宏・黒碕薫・集英社

志々雄と似た答えを掲げる敵もいる

北海道編の敵・劍客兵器は、外国の勢力に備えて日本の戦力を強めようとし、そのために人々を戦わせる。
強い者を集めて国を変えようとした志々雄の考えと、重なる部分がある。
劍客兵器は志々雄の残党ではなく、自分たちの計画で戦う組織だ。
凍座は栄次の怒りがさらに強くなることを期待する。
栄次が苦しんだ過去さえ、凍座には戦う者を育てる材料に見える。
その凍座に栄次が銃を撃った場面は、志々雄一派に傷つけられた人間を、再び強さのために利用しようとする相手との衝突でもある。
志々雄の刀や部下が剣心の側にいる一方で、志々雄と似た発想は敵の側にも現れる。

京都では剣心が志々雄を倒した。
北海道では、志々雄の支配で家族を失った栄次と、志々雄の側で戦った宗次郎が、同じ敵と戦いながら答えを探す。
志々雄の刀を誰が持つかよりも、志々雄の「弱肉強食」に育てられた者と傷つけられた者が、これからどう生きるか。
剣心が京都で勝っても終わらなかった問いは、その二人の間に残っている。

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