藤田和日郎さんは、『からくりサーカス』の格好のよいポーズを描くために、ダンサーやファッションモデルの所作を調べていました。
手の動きでは、ピアニストの演奏を参考にしていました。
人形を操る人物の動きを考えることが、バレエやピアノへ関心を広げるきっかけでした。
藤田さんは、人形を使う人の動きを、ほかの分野の所作から考えていたのです。

人形を操る手から、ピアニストの演奏へ
藤田さんは2019年の本人インタビューで、人形を操る手や所作に注目すると、美しい動きについて考えるようになると話しています。
そこで参考にしたのが、バレエやピアノでした。
ピアニストが鍵盤を弾く場面を、格好のよい手の動きの参考にしたといいます。
演奏する人の手の動きを、漫画を描く時の参考にしていたのです。

しろがねは、片脚を伸ばし、両手で糸を操る姿で描かれています。
人形が戦う場面には、操る人物の手や姿勢も描かれているのです。
格好のよいポーズには、ダンサーやモデルの所作
同じ取材で藤田さんは、人物のポーズを描く時、ダンサーやファッションモデルの所作を調べたとも説明しています。
手だけでなく、身体全体の見せ方にも、漫画の外に参考を求めていました。
『からくりサーカス』第1巻の表紙でも、しろがねは両腕を広げ、指先の形まで見える姿で描かれています。
人形や人物の見た目に加えて、どのような姿勢を取らせるかも、絵の印象を作っています。

人形は、人物の戦い方を変える仕掛けでもあった
田中圭一さんとの対談で、藤田さんは、等身大の人形を使うことに魅力を感じた理由も話しています。
藤田さんは、女性が人形を使って強い敵と対等に戦うことや、小さな子どもが強い敵を倒すことを、この仕掛けの魅力に挙げています。
強い人物が自分の拳で戦う一方、人形を使う人物には、違う戦い方を描けると考えていました。
藤田さんは、人形を加えることで、さまざまな異形のデザインを登場させられたとも述べています。
人物と人形の組み合わせは、登場人物が何をできるかにも、絵の見せ方にも関わっていたのです。

調べた動きを、ほかの場面にも生かす
藤田さんは、調べたものを一度だけで終わらせるのはもったいないと考え、手を丁寧に描き、ほかの場面にもつなげていったと話します。
同じ2019年の取材後編では、藤田さんは連載ごとに仕事場の資料本を入れ替えていたと説明しています。
『うしおととら』で使った妖怪の本を別の部屋へ移し、『からくりサーカス』の人形やサーカス、錬金術の本へ入れ替えました。
作品に必要な資料を調べながら、物語にも絵にも使うものを見つけていたのです。
人形の調べ物からサーカスや錬金術へ広がった着想は、『からくりサーカス』が生まれた過程で紹介しています。
まとめ
人形を使う人物を描く時、藤田さんは人形の仕組みから、操る人の身体へと関心を広げていました。
演奏やダンスを参考にしたという話を知ると、人形が戦う場面も、操る人物の手や姿勢と合わせて楽しめます。
『からくりサーカス』の戦いを形作るのは、人形だけでなく、それを動かす人物の所作でもあるのです。


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