高田裕三さんの『3×3EYES』と『碧奇魂ブルーシード』には、神話に由来する名前が登場します。
『3×3EYES』では、インド神話のシヴァやパールヴァティが人物の名前に使われます。
『ブルーシード』では、出雲神話のクシナダ姫が少女・藤宮紅葉に、草薙の剣が青年・草薙護の名前に結びついています。
『3×3EYES』は人間になるための旅に神々の名を取り込み、『ブルーシード』は神話の姫や剣の役を、現代の少女と青年に組み替えています。

『3×3EYES』は、新宿の少年と人間になりたい少女から始まる
『3×3EYES』でパイと出会う藤井八雲は、東京で暮らす少年です。
パイはチベットから来た、三つの目を持つ妖怪・三只眼吽迦羅の生き残りでした。
彼女が望んでいたのは、人間になることです。

パイに命を救われた八雲は、不死の存在になります。
八雲自身も人間に戻るため、パイと一緒に人化の法を探すことになりました。
旅の舞台は日本から香港、さらに異世界へと広がります。
身近な東京の生活から始まり、人間になるための旅を通して、未知の世界に出会っていく物語です。
パイと鬼眼王の名前にある、インド神話とのつながり
パイには、パールヴァティー四世という名前があります。
三只眼吽迦羅の王である鬼眼王も、シヴァという名を持っています。
インド神話でパールヴァティーはシヴァの妻にあたる女神です。
漫画のパイと鬼眼王にも、この二つの神の名が結びついています。

パイと旅をするのは、東京の少年だった八雲です。
鬼眼王の復活を目指すベナレスは、パイを捕らえようとする人物です。
神々に由来する名は、人間になるために旅をするパイと八雲が、鬼眼王をめぐる争いに関わっていく物語に取り込まれています。
『3×3EYES』を読んでインド文化を学ぶ道へ進んだ天竺奇譚の歩みも、そのつながりの一例です。
好きになった漫画の人物から、名前の向こうにある神話へ関心が広がっていきました。
『ブルーシード』は、クシナダ姫と草薙の剣を少女と青年に変える
『ブルーシード』の元になった出雲神話には、ヤマタノオロチに命を狙われるクシナダ姫が登場します。
スサノオがオロチを退治し、姫を救います。
オロチの尾から見つかった剣が、草薙の剣です。

漫画の中心にいるのは、クシナダの血を継ぐ少女・藤宮紅葉です。
紅葉は、自分の命と引き換えに化け物・荒神を封じる、人柱としての役目を負っています。
神話で救われる姫だったクシナダが、漫画では自分の命をどう扱われるかに直面する主人公になっているのです。
草薙も、剣から青年の名前へと変わります。
草薙護は体に荒神を宿し、紅葉を守る役目を課された人物です。
草薙は、紅葉を人柱にして荒神を倒せば自分も解放されると考え、初めは彼女の命を狙います。
後には、重傷を負った紅葉を救います。
二人の関係は、最初から守る青年と守られる少女として安定しているわけではありません。
スサノオの役も、原作漫画では荒神たちの王になっています。
姫を救う神、救われる姫、見つかる剣という出雲神話の組み合わせが、紅葉と草薙、荒神をめぐる関係へと組み替えられています。
神話と現代の生活を、どこでつなぐか
『3×3EYES』では、新宿で暮らしていた八雲がパイと出会い、遠い土地や異世界へ進みます。
人間になるという二人の願いが、旅を続ける理由になっています。
『ブルーシード』では、奥出雲で育った紅葉が、現代の日本で人柱の役目を背負います。
紅葉は荒神と戦う国土管理室に加わり、物語の舞台も東京へ移ります。
古い神話につながる血筋と、現代の政府組織が、一人の少女をめぐる物語に同居しているのです。
『ブルーシード』は『3×3EYES』の連載中、1992年に掲載が始まった作品です。
高田さんの主な作品一覧でも、この時期に重ねた仕事を紹介しています。
一方の長い冒険を描いていた時期に、もう一方では日本神話から別の人物関係を作っていました。
まとめ
神話の草薙は剣ですが、漫画では紅葉を守る役目を負った青年です。
こうした変化をたどると、古い物語の名前が、現代の人物関係のなかで別の役を持つことが分かります。
神話から漫画の人物へ、好きな漫画から名前の由来へ。
二作を読み比べる面白さは、その両方を行き来できるところにあります。


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