福本伸行さんの師匠は、『風の大地』などの作画を手がけたかざま鋭二さんです。
福本さんは18歳で仕事場に入り、約1年半、アシスタントを務めました。
後の福本作品は師匠とは違う画風になりましたが、本人はそこで身につけた仕上げや背景の経験を、自分の仕事の土台として語っています。
『風の大地』の作画家のもとへ
かざまさんは、坂田信弘さん原作のゴルフ漫画『風の大地』を描いた漫画家です。
福本さんが修業したのは、その作品が始まるより前の時代でした。
高校卒業の頃に持ち込んだ漫画を見た編集者から、まず絵を学ぶよう勧められ、かざまさんの仕事場へ連絡します。
初めの原稿はスクリーントーンも知らずに描いたものだったと、福本さんは回想しています。

かざまさんが福本さんを受け入れたのは、すでに絵がうまかったからではありません。
福本さんの説明では、まだ18歳なので上達するだろうと期待されていたのです。
ところが、約1年半が過ぎても十分な上達には届かず、別の仕事も考えたほうがいいと勧められました。
入門から独立、デビューまでの経緯は、福本さんが漫画家を目指した頃の歩みで紹介しています。
師匠が「練習しろ」と言ったとき
福本さんには、かざまさんの指導で覚えている言葉があります。
絵の練習をしているかと聞かれ、一応していると答えたとき、練習しなければ上達しないと諭されたのです。
続けてかざまさんは、アシスタントに練習しろと言うのはできるだけ避けているので、自分からそう言われたら「3倍くらいに感じて欲しい」と伝えたといいます。
福本さんは、2009年の本人インタビューで、この言葉を思い出していました。
その場でかざまさんが、普段はアシスタントに練習しろと注意するのを控えていることまで説明したという回想です。
後の対談でも、絵がなかなか上達しなかった話を、福本さん自身が率直にしています。

仕上げと背景の修業は、独立後も残った
絵の上達が遅かったという回想には、修業で得たものの話も続きます。
福本さんは『川島・山内のマンガ沼』での対談で、線を描く力をつけてもらい、ベタ、ホワイト、トーンなどの仕上げを覚えたと説明しています。
背景も描くようになり、それが人物を描く力にもつながったと振り返っていました。
2020年の本人取材では、師匠のうまい絵を約1年半見続けた経験が、大きな蓄積になったとも話しています。
福本さんが挙げた修業の成果は、人物の画風以外の仕事にも及んでいます。
漫画の画面を仕上げ、背景を描き、よりよい絵を日々見る経験が残っていたのです。

独立後の福本さんは、画力だけで仕事を取ることが難しく、自分で話を作った読み切りを描き続けました。
2023年の本人取材では、その経験が物語を作る力を高めたと語っています。
かざまさんのもとで学んだ作画の基礎に、独立後の話作りが重なり、福本さん自身の漫画の仕事が続いていきました。
まとめ
福本さんの師弟関係には、伸び悩みを指摘された厳しさと、後まで役立った修業の経験の両方があります。
本人が修業の成果として挙げるのは、仕上げや背景を学び、うまい絵を見続けた日々です。
その作画の基礎を持って独立した後、福本さんは自分で話を作る力を磨きました。
師匠のもとでの経験は、福本さん自身の漫画を仕事として続けるための土台にもなっていたのです。


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