『レベルE』の最初の騒動では、王子と護衛隊が宇宙人同士の争いに巻き込まれたように見えます。
ところが、王子の日記が明かすのは、王子とディスクン星人が協力して、護衛隊を試していたという事情です。
誰と誰が通じ、誰が事情を知らずに対応していたのか。
種明かしの中心にあるのは、この登場人物同士の関係です。
冨樫義博さんはこの一編で、関係を後から見せることで、それまでの場面の意味を変えています。
ディスクン星人の要求が、護衛隊には本当の危機になる
ディスクン星人は、王子の代わりに護衛隊の命を求めます。
クラフトたちは、王子が彼らと手を組んでいることを知りません。
王子を守るためにどうするか、真剣に対応しています。

同じ場にいる人物が、同じ事情を知っているわけではありません。
王子と協力者たちは芝居の段取りを知っていて、護衛隊はその芝居を知らないまま選択を迫られます。
読者にも、王子とディスクン星人の打ち合わせは、この時点では明かされていません。
相手が本気だと思って困っている護衛隊の姿を読むので、要求は危険なものとして受け取れます。
護衛隊と一緒に危機への対応を読む間、読者は王子の仕掛けを知らされていません。
隠したのは、危険な相手との協力関係
王子の日記を読むと、ディスクン星人は、護衛隊に要求を突きつける役を引き受けていたと分かります。
王子が怖い相手と対立したという話が、王子がその相手と一緒に護衛隊をからかった話へ変わります。
王子は地球へ来る前に、ディスクン星人の長へ協力を頼んでいました。
一方、救命艇の故障や、雪隆との出会いには、到着後の偶然もあります。
日記が記録した計画と偶然を分けると、王子が最初からすべてを決めていたわけではないことも分かります。

冨樫さんは護衛隊の反応を描いた後で、日記を通じて王子の計画を明かしています。
読者はまず護衛隊が困る場面を読み、その後で、王子が何を用意していたかを知ります。
同じ出来事でも、その順番で読むから、危機だと思っていた場面を別の意味で見直すことになります。
日記は、すでに読んだ事件を、仕掛けた本人の側から説明しています。
長い文字のまとまりが、ここでは騒動の見え方を一度に変える種明かしになっています。
芝居だと分かっても、クラフトの怒りは残る
事情が明らかになると、クラフトは怒り、雪隆も王子を問い詰めます。
仕掛けを知らなかった人たちは、本気で王子のことを考え、対応していたからです。
王子が用意した危機は芝居でも、巻き込まれた人が困った時間まで芝居になるわけではありません。

ここで読み方が変わるのは、護衛隊の真剣さです。
種明かしの前には、危機へ向き合う緊張として読んでいた姿が、種明かしの後には、王子の遊びに振り回された姿として見えてきます。
クラフトの苦労は同じでも、読者にとって、その原因の理解が変わります。
種明かしでは、事件の答えと一緒に、登場人物の役割も明らかになります。
守られる立場にいた王子が、実は危機を仕掛ける側にいたと分かり、王子と護衛隊の関係の見え方が変わります。
真相の説明に続いて、巻き込まれた人の怒りを描くことで、騒動は笑える場面へもつながっています。
再読すると、王子の言葉を違う立場から聞ける
最初にこの騒動を読んだときには、王子がどこまで事情を知っているのか分かりません。
日記を読んだ後には、王子が知っていて隠していたことを踏まえて、前の場面へ戻れます。
王子の説明に振り回される人たちを、今度は仕掛けを知る側から見られるのです。

一度目には、護衛隊が王子を守るためにどう対応するかを読みます。
二度目には、王子が何を隠し、周囲が何を知らずに動いていたかを読めます。
章の中心人物と、騒動を仕掛ける王子の役割を分けて見ると、再読で変わる部分を追いやすくなります。
まとめ
『レベルE』のこのどんでん返しは、登場人物が見せていた顔の裏にある、協力関係を後から明かします。
護衛隊に脅威として迫っていたディスクン星人は王子の協力者で、クラフトが守ろうとしていた王子は芝居を仕掛けた人でした。
その変化が、危機を乗り越える話を、王子に振り回された人たちの話へ読み替えさせます。
答えを知った後、同じ場面へ戻ると、今度は事情を知る側として読めます。
真剣な反応と、後から分かる王子の企みを二度楽しめるところに、この種明かしの面白さがあります。


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