『烈火の炎』水鏡は柳を守りたかったのに、なぜ髪を切ったのか

烈火と水鏡を描いた烈火の炎第2巻の表紙 烈火の炎
安西信行『烈火の炎』小学館、第2巻

水鏡凍季也は、柳を危険から遠ざけようとする。
ところが遊園地で、水鏡は守るはずの柳の髪を、本人の意思を聞かずに切ってしまう。
柳が亡き姉・美冬に似ていたためだ。

水鏡の行動を読む鍵は、柳を守りたい気持ちと、美冬の姿を柳に求める気持ちが重なっていることにある。
柳を大切にしたい水鏡が、柳自身の思いを置き去りにしてしまう。
髪を切る場面には、その食い違いがはっきり表れている。

烈火と水鏡を描いた第2巻の表紙
安西信行『烈火の炎』小学館、第2巻

水鏡が守ろうとした柳には、美冬の面影があった

幼い水鏡は両親を失った後、美冬と二人で暮らしていた。
美冬は水鏡をかばって殺され、残された水鏡は姉の仇を追うようになる。
柳の姿が美冬に似ていることは、水鏡が柳に親切にする理由にも、烈火を遠ざけようとする理由にもなっている。

水鏡は、まだ炎を使いこなせない烈火では柳を守れないと考える。
美冬に似た柳を、力不足と判断した烈火から引き離そうとしたのだ。

しかし、美冬に似ていることを大切にするあまり、水鏡は柳の姿まで変えようとする。
閻水で長い髪を切り、美冬の姿へ近づけるのだ。
柳がどうしたいかより、水鏡がどんな姿の柳を見たいかが優先されている。
危険から守るつもりの水鏡自身が、柳に望まないことをしてしまった。

水鏡凍季也
安西信行『烈火の炎』小学館

柳は水鏡の過去に同情しながら、自分は水鏡の姉ではないと伝える。
水鏡が悲しんでいることを理解しても、柳は美冬の代わりにはなれない。
その言葉は、水鏡のつらい過去を否定する言葉ではなく、目の前にいるのは柳という別の人間だと伝える言葉なのである。

対決の後も、水鏡は柳の安全を問う

烈火は柳の髪が切られたことに怒り、水鏡と戦う。
水鏡を倒した烈火は、水鏡の長い髪を切り、柳にしたことを返す。

水鏡はなお、烈火のそばで柳が危険にさらされたらどうするのかと問う。
柳を守れるのかという心配は、勝負に負けた後も残っている。
烈火が自分の命で責任を取る覚悟を示すと、水鏡はその答えを受け止めて去っていく。

花菱烈火の原作カラーイラスト
安西信行『烈火の炎』小学館

水鏡の姉への思いは、この対決で消えたのではない。
後に師と向き合う時にも、美冬の死は水鏡にとって重い問題として残っている。
一方、柳を美冬の姿に変えようとした行いは、柳の拒否と烈火の怒りにぶつかった。
美冬を大切に思うことと、柳の姿や居場所を自分で決めることを、柳と烈火は同じようには受け入れなかったのだ。

柳は水鏡の悲しみに同情しても、姉の代わりになることは受け入れなかった。
守りたいと思う相手にも、自分とは違う願いがある。
柳の言葉が水鏡に伝えたのは、その違いだった。

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