姉の仇を討つため、凍季也は巡狂座から氷紋剣を学んだ。
その師が、実は姉の死に責任を感じ、自分を凍季也に殺させようとしていた。
七年間教えを受けた相手を、最後には仇として斬る。
巡狂座が用意した結末を、凍季也は受け入れなかった。
凍季也の復讐が終わるのは、誰かを殺して姉の無念を晴らした時ではない。
師の罪悪感を引き受けて剣を振るうことをやめ、復讐以外にも生きる理由があると答えた時だ。
そこへ至るまでには、師との暮らしと、戒との戦いがある。

巡狂座が、自分を「仇」にした理由
美冬を殺したのは、魔導具の閻水を奪いに来た森光蘭の配下だった。
巡狂座はその二人を事件の直後に殺している。
凍季也が探し続けた、姉を刺した男は、すでに生きていなかった。
それでも巡狂座は、自分こそが美冬を死なせたと考える。
彼は凍季也と美冬の実の祖父であり、代々継ぐ「巡狂座」の称号と氷紋剣を、次の世代へ伝える立場にあった。
幼い凍季也を危険に巻き込みたくない美冬が、弟に代わって修行し、閻水を持つようになった。
その閻水が狙われたことで、美冬は命を失った。
巡狂座が悔いているのは、自分が姉に刃を向けたことではない。
継承を求めた自分が、孫を死なせる道へ進ませてしまったことだ。
凍季也に自分を殺させる計画は、その罪悪感から生まれている。

ところが、その師は凍季也に剣だけを教えたわけではなかった。
勉強を教え、病気になれば看病し、姉を亡くした少年を育てた。
仇討ちをさせようとする一方で、仇討ちが済んだ後の生活も見据えていたのである。
凍季也にとって巡狂座は、復讐のための師である以上に、もう一人の父親だった。
戒は、望みを果たした後に何が残るかを見せた
巡狂座のもう一人の弟子である戒は、凍季也を倒すことに生きがいを賭けていた。
師から凍季也と比べられ、自分は石ころだと言われ続けた戒にとって、勝利は自分の価値を認めさせる機会でもあった。
裏武闘殺陣で姉の仇を知っていると語ったのも、凍季也の全力を引き出すためだ。

激闘の末、戒は凍季也に勝つ。
凍季也も、その力を認めた。
だが、望みをかなえ、深く傷ついた戒は、リングから身を投げる。
その前に凍季也へ伝えたのが、復讐心だけで戦うなという言葉だった。
戒の勝利は、凍季也への憎しみに人生を費やした末の到達点だった。
その目的を果たしても、戒には次に生きる目的が残らなかった。
だから戒の忠告は、戦いに敗れた者の負け惜しみではない。
勝った本人が、自分と同じ生き方をするなと伝えている。
凍季也は、仇討ちの成功だけを目指す人生の行き着く先を、戒の最期から知らされる。
師を斬らないという、最後の答え
巡狂座との対決で、凍季也は師の衰弱に気づきながらも全力で戦い、氷魔閻を破壊する。
戦いの後、祖父としての正体と美冬の死の経緯を聞かされる。
巡狂座はなおも、姉の仇として自分にとどめを刺すよう求めた。
凍季也は、その求めを拒む。
戒と火影の仲間に出会い、復讐だけに囚われていた自分は変わったと伝える。
巡狂座が抱える責任と、凍季也が今ここで師を殺すことを、同じものにはしなかった。
凍季也は、父親のように育ててくれた師を、新たな仇にすることを選ばなかった。
巡狂座は、その答えに安堵して息を引き取る。
凍季也が師から受け取ったものは、仇を斬る技だけではなかった。
師が世話をし、勉強まで教えてきた少年は、師の望む復讐を断り、自分の人生を続けることを選べるようになっていた。
巡狂座にとっての救いは、凍季也に殺してもらうことではなく、その成長を知ることになったのである。


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