『烈火の炎』紅麗はなぜ過去へ戻ったのか――仇討ちに同行した小金井の思い

雷覇と音遠に感謝し、麗の解散を告げる紅麗 烈火の炎
『烈火の炎』安西信行/小学館、第33巻。

天堂地獄との戦いが終わった後、紅麗は時空流離を使って戦国時代へ戻る。
紅麗には、火影忍軍を滅ぼした織田信長への仇討ちが残っていた。
紅麗は雷覇と音遠に別れを告げるが、小金井は紅麗を一人にしたくないと、後を追う。
仇討ちをしに帰る紅麗と、紅麗のそばを居場所に選ぶ小金井。
この二人の思いを読むと、戦国への旅立ちは、現代で築いた兄弟の関係が続く場面にもなる。

現代の決戦が終わっても、火影の仇は残っていた

紅麗は、陽炎が幼い烈火を逃がすために使った時空流離に巻き込まれ、戦国時代から現代へ流されている。
紅麗にとって戦国時代は、自分が生まれ、両親と火影忍軍を失った時代だった。

現代で紅麗を苦しめたのは、森光蘭だった。
森は、紅麗が慕う養母の月乃を人質に取り、紅麗を従わせる。
天堂地獄との決着によって、その森との戦いは終わる。
しかし、火影忍軍を滅ぼした信長は、四百年前の時代にいる。
森を倒すことと、父母や一族の仇を討つことは、紅麗には別の決着だったのだ。

裏武闘殺陣の決勝で烈火に語りかける紅麗
『烈火の炎』安西信行/小学館。

紅麗と烈火の関係も、かつての敵同士のままでは終わらない。
出発する紅麗を、烈火は兄と呼んで見送る。
弟から兄として見送られる紅麗にも、火影忍軍のために果たしたい仇討ちは残っていた。
紅麗は過去へ戻り、本能寺で信長を討つ。

麗を解散し、雷覇と音遠に別れを告げる

紅麗は、旅立つ前に雷覇と音遠へ感謝し、麗の解散を告げる。
これまで紅麗を支えてきた二人は、現代に残る。
紅麗が帰ることで、紅麗を首領とする麗も終わりを迎えるのだ。

雷覇と音遠に感謝し麗の解散を告げる紅麗
『烈火の炎』安西信行/小学館、第33巻。

紅麗の言葉を聞いた音遠は、顔を伏せている。
音遠にとっては、紅麗を支えてきた日々の終わりでもある。
雷覇と音遠は、紅麗の武運を祈って見送る。
現代に残る二人も紅麗への思いを伝え、紅麗は感謝を伝えて去っていく。
麗は解散しても、最後に交わすのは、互いへの感謝と願いだった。

小金井が選んだのは、紅麗のそばという居場所だった

紅麗について行く小金井は、火影忍軍が滅んだ戦国時代を生きた人間ではない。
小金井自身が語るのは、信長への恨みではなく、紅麗を一人にしたくないという思いだ。
紅麗のところが自分の居場所だと考え、小金井は現代の仲間に別れを告げる。
二人は同じ時代へ向かうが、その旅を選ぶ理由まで同じではない。

鋼金暗器を手にした小金井薫
『烈火の炎』安西信行/小学館。

小金井は、孤独に耐えられず自分の命を絶とうとしたとき、紅麗に助けられている。
紅麗は小金井に、兄弟になろうと呼びかけた。
その後、小金井は柳への扱いに失望して麗を離れ、烈火たちの仲間になる。
紅麗を慕っていても、紅麗のすることを何でも受け入れていたわけではない。

火影の仲間になった小金井には、現代で続けたい生活もある。
最終巻の小金井は、みんなと楽しく過ごしたい気持ちを語ったうえで、紅麗について行くことを選ぶ。
一人で去ろうとする紅麗を前にして、かつて孤独だった自分を救ってくれた兄のそばを、小金井は自分の居場所に選び直したのだ。

紅麗の旅立ちには、最後まで仇討ちという目的が残る。
小金井は、旅に出る紅麗を一人にしなかった。
かつて紅麗が小金井に差し出した兄弟の関係が、今度は紅麗の孤独を支える。
信長を討つための帰還が、二人の兄弟がともに生きる出発にもなるところに、この結末の温かさがある。

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