桑原は魔界の戦いに加わらず、高校受験を選ぶ。
蔵馬は魔界へ向かい、幽助とは別の陣営に立つ。
一人は戦いから離れ、もう一人は友人との対戦まで望んでいる。
ずいぶん違う選択だが、どちらも幽助との付き合いを終わらせることにはならない。
この二人を比べると、四人の友情が何を求めていないのかが見えてくる。
仲間でいるために、戦う理由まで同じにする必要はない。
幽助についていくことも、幽助と戦わないことも、友情の条件にはなっていないのだ。
そして蔵馬自身も、望んで幽助と戦うことと、組織の都合で幽助を倒すことを分けて考えている。
桑原は、幽助の戦いに参加することで友情を証明しない
魔界行きを決めた幽助たちに、桑原は腹を立てる。
強い相手がいるからという理由で、妖怪の勢力につこうとする姿勢を批判するのだ。
ともに戦った経験があっても、次に何のために戦うかについては意見が分かれる。
だが桑原は、強くなりたい気持ちまで幽助と無縁なわけではない。
後の会話では、自分にも同じ気持ちがあり、選んだ道が違うのだと告げる。
ここで変わるのは、二人の進路ではなく、別れる相手への言葉だ。
桑原は受験を選んだまま、幽助に生きて帰るよう願う。
その願いに続く「自慢するからな」が、二人らしい。
桑原が帰還後の幽助に聞かせたいのは、自分の合格の話である。
桑原も、自分の目標を達成して幽助に報告しようとしている。
その前のやり取りでは、幽助も帰ったら桑原の受験結果を見にいくと話している。
二人が約束する再会は、再び一緒に戦うためのものではない。
それぞれが選んだ道の続きを、相手に話すための再会だ。
幽助の冒険の話を桑原が聞くだけでなく、幽助にも桑原の挑戦を聞いてほしい。
二人の別れには、そんな対等なやり取りが残っている。
蔵馬は、戦う相手だけでなく戦う理由も選ぶ
蔵馬の場合、話はさらに複雑になる。
魔界では幽助が雷禅、飛影が軀、蔵馬が黄泉の側に入り、三人は別々の勢力に属する。
蔵馬は黄泉側の戦力を整えていくが、その関係には家族を使った脅しがある。

黄泉は飛行機が落ちなければいいと口にし、蔵馬は驚いて反応する。
家族の安全に触れて相手を従わせようとする会話だ。
蔵馬が黄泉に協力する事情には、こうした圧力も含まれている。
一方で、蔵馬には幽助と戦ってみたい気持ちもある。
しかも、少し前までは魔界の均衡のためなら幽助を倒すのも仕方ないと考えていたことを明かす。
幽助が黄泉のもとを訪れた際の筆談では、対戦への思いに「しかしこんな形じゃない」と続け、酎や陣たちにどちらにつくか意見を求めている。
幽助と戦ってみたかった蔵馬も、目の前の対立で彼を倒すことには迷っている。
かつての仲間か、今の敵かという分類だけでは、本人の判断を説明できない。
幽助が国の枠を外したトーナメントを提案すると、蔵馬は賛同し、黄泉に「ただの蔵馬」になると告げる。
ここで蔵馬は、誰の部下かではなく、自分が何に賛成するかによって立場を決め直す。
蔵馬が賛成したのは、幽助も一人の参加者として勝敗を競う方法だ。
案には協力し、その後はそれぞれが勝ち上がろうとする。
協力できることと、勝負の相手にもなれることが、同じ関係の中にある。
桑原は戦いに加わらず、蔵馬は対戦の可能性を残す。
四人の友情は、どちらか一方を正しい付き合い方として全員に求めてはいない。
戦いが終わっても、二人で会う理由が残っている
その関係を、戦闘から離れた場所で確かめられるのが、桑原と蔵馬の日常だ。
暗黒武術会の前には、二人は特訓をしている。
終盤の第19巻では、一緒に図書館で勉強し、帰り道にも学校の話をしている。

桑原が成績を維持する苦労を話すと、蔵馬は勉強も大変だろうと応じる。
魔界の強敵と戦ってきた蔵馬が、桑原の学校生活の話に付き合っている。
二人で過ごす時間は、強くなるための特訓だけではなくなっているのだ。
この場面には、幽助がいない。
それでも、幽助の仲間だった二人の付き合いは続いている。
四人の友情は、幽助と他の三人をつなぐ関係だけでできているわけではない。
桑原と蔵馬の間にも、二人で会い、話をする関係がある。
だから、幽助の次の戦いに同行するかどうかが、そのまま四人との付き合いを続けるかどうかにはならない。
共に戦った経験は、彼らを結びつけている。
けれど、仲間の一人が望むことを、残りの三人全員の目的にはしていない。
桑原が戦いに加わらないことも、蔵馬が幽助との対戦を望むことも、その点でつながっている。
相手と違う道を選べることまで含めて、彼らの友情なのだ。


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