和月伸宏は『幽☆遊☆白書』から何を受け継いだ? 『るろ剣』と冨樫義博の接点

『るろうに剣心』文庫版第1巻の表紙 和月伸宏
『るろうに剣心』文庫版第1巻(和月伸宏/集英社)。

和月伸宏さんは『るろうに剣心』を、冨樫義博さんの『幽☆遊☆白書』の流れにある作品だと語っています。
強く心を動かされたのは、戦う漫画の中でも人物のドラマを描けるという点でした。
連載前のスケッチブックには蔵馬の絵もあり、冨樫さんのコマ割りから学んだ技術についても話しています。

「異質な時代劇」ではなく、『幽白』につながる漫画

2016年のインタビューで、和月さんは『るろうに剣心』が当時の『週刊少年ジャンプ』では異質な作品だったのでは、と尋ねられました。
和月さん自身は、そうは感じていなかったと答えます。
自分の中では『剣心』は『幽白』の流れにある、と考えていたからです。
和月さんはその話に続けて、連載前のスケッチブックから見つかった絵のことを明かしました。

剣心を考えたスケッチブックには、蔵馬の絵もあった

和月さんは『ジャンプ流!』の取材で、連載前に剣心などを考えていたスケッチブックを開きました。
そこに『幽白』の蔵馬を描いた絵があり、自分でも驚いたそうです。
若い頃は美形の人物を描くのが楽しかった、と和月さんは振り返ります。

このインタビューで、和月さんは蔵馬を剣心の直接のモデルにしたとは説明していません。
剣心の外見について尋ねられた和月さんは、先に描いた時代物の読切に長身で長髪の男性がいたため、次は逆の人物を描こうとした、とも説明しています。
スケッチブックの蔵馬は、『幽白』が和月さんの手元にあったことを伝える、連載前の具体的な痕跡です。

蔵馬を描いた『幽☆遊☆白書 完全版』第2巻の表紙
蔵馬を描いた『幽☆遊☆白書 完全版』第2巻の表紙(冨樫義博/集英社)。

戦う人物の過去まで描けると知った

和月さんは『幽白』を読んで、バトル漫画でも人物のドラマを中心にできることに感動したと話しています。
取材者が戸愚呂兄弟や仙水の過去を例に出すと、和月さんは、そこが『ドラゴンボール』との大きな違いだと答えました。
本人によれば、新人賞の受賞作を含め、もともと戦いだけではなくドラマを中心に漫画を作ってきました。
『幽白』は、和月さんが大切にしていた人物のドラマを、バトル漫画の中で強く感じた作品でした。

和月さんは宝塚歌劇へ寄せた原作者メッセージで、『るろうに剣心』を、かつて人を斬って新時代を作った男が、明治には人を殺さずに守って生きる物語だと説明しています。
剣心の戦いには、相手を倒せるかという勝負と同時に、過去に人を斬った自分がこれからどう生きるかという問題があります。
人物の生き方を戦いの中心に置くところが、和月さん自身の言う『幽白』とのつながりを理解する手がかりになります。

冨樫作品からは、横長のコマの読みやすさも学んだ

和月さんは集英社の若手作家との対談で、冨樫さんの漫画のコマ割りから受けた影響も明かしています。
長身の人物に合わせて縦長のコマばかりにすると画面が窮屈になるため、和月さんは横長のコマを使うようになりました。
冨樫さんの漫画にある横長のコマは、台詞が多くても目で追いやすい、と説明しています。

ここで和月さんが挙げたのは「冨樫さんの漫画」で、特定の一作品だけではありません。
『幽白』について語った人物ドラマの話とは別に、漫画を読みやすくする技術も、冨樫さんから学んだのです。

「陰」の漫画を好み、最後は希望を描きたい

和月さんは同じ2016年のインタビューの続きで、好きな『幽白』や『ジョジョの奇妙な冒険』を、自分に近い「陰」の側の作品として挙げています。
『ドラゴンボール』のような王道の大きな流れがあり、その裏側で『幽白』につながる『剣心』を描いている、というのが2016年に振り返った和月さんの見方です。

同時に本人は、最後には「陽」を選び、夢や希望を描きたいとも語っています。
和月さんは他作品の影響についてのやり取りでも、受けた影響は自分の中で消化しなければならないと話しました。
『幽白』から学んだ戦いの中のドラマに、剣心の不殺と贖罪という自分の主題を重ねたと捉えられます。

まとめ

和月さんが『幽白』から強く受け取ったのは、バトルの中で人物のドラマを描けるという実感でした。
蔵馬の絵が古いスケッチから出てきた話は目を引きますが、和月さんが語る『剣心』とのつながりは、物語の作り方により深くあります。
冨樫さんの漫画から横長のコマの読みやすさも学びました。
その影響を受けながら、剣心がどう生きるかを描いたところに、和月さん自身の選択があります。

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