木城ゆきとはどう修業した?完成原稿1000ページを目標にした『銃夢』以前

帽子と眼鏡を身につけた木城ゆきとさん 木城ゆきと
木城ゆきとさん/2019年の本人インタビュー掲載写真、GIGAZINE。

木城ゆきとさんは、高校時代に、完成原稿を1000ページ描くことを目標にしました。
数えたのは、落書きや下描きではなく、投稿できる形まで仕上げた漫画の原稿です。
本人の記録では、1000ページを目指し始めてからの完成原稿が、通算255ページになった時点で『気怪』が新人賞に入選しています。

入選したことは大きな成果でしたが、雑誌に載った自分の絵から、次の課題も見えてきました。
『銃夢』を描くまでの木城さんの修業には、原稿を完成させることと、完成した作品を見直すことの両方がありました。

「一枚」は、最後まで仕上げた投稿原稿

木城さんが漫画を仕事にしようと考えたのは、高校生の頃です。
映画監督や模型作りにも惹かれていましたが、漫画なら、一人で物語を作ることができる。
新人賞という入口も分かりやすく、それまで描いてきた漫画を仕事にする道を選びました。

本人の『ゆきとクロニクル』の回想には、そのとき出会った技法書『サンデー漫画カレッジ』の話があります。
1000枚の絵を描く根気があるかどうか、という一文に励まされ、木城さんは1000ページを目指すことにしました。

ノートやルーズリーフに描いた漫画なら、すでに1000ページを超えていました。
それでも、自分には人に見せられる実力が足りないと感じていたため、ペン入れと仕上げまで終えたB4の投稿原稿だけを数えます。
木城さんは机の前に「目標1000p!!」と貼り、高校卒業までに新人賞へ入賞することも目標にしました。

255ページの積み重ねで『気怪』が入選

1984年、木城さんは『気怪』を小学館の新人賞に投稿し、入選しました。
この作品を振り返った本人の記録によると、1000ページを目指し始めてから描いた完成原稿は、通算255ページでした。
目標の枚数には届いていなくても、木城さんは、絵が大きく進歩し、その時点でできることを尽くした手応えを得ていました。

『気怪』は、もともと美術部の同人誌へ載せるつもりで描き始め、途中で投稿へ切り替えた作品です。
入選の知らせを電話で聞いたときには、興奮で足が震えたといいます。
自分の漫画が有名な漫画家の作品と同じ雑誌に載ることも、大きな喜びでした。

手と空と紙飛行機が描かれた木城ゆきと初期作品集 飛人の表紙
木城ゆきと初期作品集『飛人』/集英社、1997年刊。書影:ネットオフ。 出典

『気怪』は、後に初期作品集『飛人』へ収められました。
『銃夢』以前に木城さんが重ねていた短編の仕事を、作品としてたどれる一冊です。

雑誌に載った絵を見て、印刷を前提に描くことを学ぶ

木城さんは、掲載誌を見つけるため、寒い中を自転車でコンビニへ向かいました。
ようやく手にした雑誌を開くと、自分の漫画が載っている喜びとともに、絵の硬さや見づらさも気になります。
原稿ではきれいに見えた部分が、印刷ではつぶれてしまう。
木城さんは、印刷された状態を考えて絵を描く必要を感じたと振り返っています。

後年の回想では、木城さんは、『気怪』には構成や人物を印象付ける力の弱さも残っていたと記しています。
絵を仕上げる力が伸びても、漫画を読ませる力には、まだ課題がありました。

短編を描きながら、自分の「構成力」を育てる

木城さんは2019年のインタビューで、1986~1988年頃には、アルバイトをしながらオリジナルの短編をたくさん描いていたと説明しています。
木城さんは、その頃の短編では、商業的な作品にしにくい、自分が試したい方向を描いていたと振り返っています。

帽子と眼鏡を身につけた木城ゆきとさん
木城ゆきとさん/2019年の本人インタビュー掲載写真、GIGAZINE。 出典

2010年の本人インタビューで、自分の強みを問われた木城さんが挙げたのは、構成力です。
一つの作品を完成させるまで、コマごとに考え、迷い、描き続けてきた。
木城さんは、自分の力を、そうした努力や苦労によって身に付けたものと捉えていました。

何を面白いと思い、それをどう漫画にするか。
完成原稿の量を重ねる中でも、木城さんは、自分が納得できる面白さを考え続けたと説明しています。
ガリィを主人公にした『銃夢』が生まれるまでにも、企画を描いては編集者へ見せ、直す過程が続きました。

新装版銃夢第1巻の表紙に描かれたガリィ
木城ゆきと『新装版銃夢』第1巻/講談社、2018年刊。 出典

まとめ

木城さんにとって、1000ページは、完成原稿を積み重ねるための目標でした。
入選した原稿でも、印刷すれば新たな弱さに気付き、その後も短編や企画を作り続ける。
木城さんが構成力を自分の強みとして語ったのは、作品を完成させるまで何度も考え、迷いながら描いてきた経験があるからでした。

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