ワン・ポーカーに勝ったカイジの目の前で、和也の処刑装置が動き始める。
和也はカイジを殺しかけた相手であり、処刑装置を用意した本人でもある。
それでもカイジは、その場を離れずに和也を助けようとした。
ただ、最初から迷いなく救出方法を決めたわけではない。
その迷いを追うと、カイジが何を恐れ、何を引き受けたのかが見えてくる。
チャンとマリオを救った時とは、何が違ったのか
和也が仕掛けた「救出」ゲームでは、光山の裏切りによってチャンとマリオが処刑されかけた。
カイジは約7000万円を支払い、二人を助けた。
その二人は後に、カイジを助けるため自分たちの命をワン・ポーカーに差し出す。
カイジが先にしたことは、二人からの見返りを約束されての投資ではなかった。
二人が死ぬのを見ていられず、大金を失う選択をしたのである。

和也が負けて逆さづりになると、カイジは装置の救出網を使うよう促す。
だが和也は、自分で網を止める自信を失い、操作をカイジに頼む。
カイジはすぐには引き受けられない。
チャンとマリオを救った時には、支払いをすれば処刑を止められた。
今度はカイジ自身の操作が少しずれれば、和也が死ぬかもしれない。
このときカイジが口にするのは、和也を見捨てたいという理由ではなく、人命のかかった目押しの重さだ。
他人の生死を決めるボタンが、自分の手に渡ることを恐れている。

そこで和也は、チャンとマリオは救ったのに自分は救わないのか、とカイジに迫る。
和也はかつて、見ず知らずの二人のために大金を払ったカイジを見ている。
そのカイジを、今は自分を助けるかどうかで試している。
カイジは和也の要求を受け、網を止めるボタンを押す。


失敗した相手を、和也はどう見たか
網は和也を受け止められる位置で止まらなかった。
和也はカイジがわざと外したと責める。
カイジは、殺すつもりなら最初から網を止める操作などしない、と反論した。
この食い違いが、二人の距離をよく表している。
和也は差し出された手にまで、裏切りを疑う。
カイジは失敗を責められても、和也を救う手段を探し続ける。


カイジは椅子にぶら下がる和也へ手を伸ばそうとするが、三人で椅子に乗ることはできない。
椅子の上から和也を引き上げる策は使えなかった。
そこでカイジはチャンとマリオを連れて下へ走る。
三人は床で大きなシートを広げ、落ちてきた和也を受け止めた。
和也が裏切りを疑っても、カイジたちは救助をやめなかった。
三人が体を動かしたことによって、和也は助かった。



救われた和也に残るもの
落下の直前、和也は幼い頃に海で溺れた記憶をたどる。
同時に海へ落ちた兄はすぐに助けられたが、和也が落ちたことには母たちが気づいていなかった。
和也は自分だけが選ばれなかったと思い込んでいた。
カイジは、その記憶を知らない。
それでも和也を救ったのは、以前に何度も裏切られながら、目の前の命を見過ごせないカイジだった。

和也を助けたことで、和也がこれまでしたことが消えるわけではない。
カイジが和也を友人として迎えたわけでもない。
勝負はカイジの勝ちで終わったが、和也の命は勝敗だけで決められなかった。
追い詰められた人は自分を守るものだという和也の疑いに、カイジたちは言葉で言い返したのではない。
落下した和也の命をつないだのは、彼が疑い続けた三人の協力だった。


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