和月伸宏さんは、いきなりコマを割って物語を作るわけではありません。
まず頭の中で考え、ノートに思いついたことを文章で書き出します。
担当編集者とストーリー協力の黒碕薫さんに迷っている点を話し、台詞の流れを脚本のように書き、場面を付箋で並べ替える。
コマ割りに進むのは、その後です。
本人が語ったこの順序には、考えを一人で抱え込まず、書いて、話して、試すという特徴があります。
ノートに「雑感」を書くところから始まる
和月さんは集英社の対談で、ネームに入る前は、描きたいことを頭の中で考え続けると話しています。
何を描くかがおぼろげに見えてきたら、ノートに「雑感」として文章を書き出します。
完成した筋書きではなく、考えていることをまず言葉にする段階です。
書いているうちに場面が見え始め、話を組み立てる材料が増えていくといいます。
和月さんは、文章にした方が問題点も見えやすいと説明しました。
コマにする前に文章を書くのは、絵の代用品ではなく、何がまだ決まっていないかを探す仕事でもあります。
担当編集者と黒碕薫に「迷っている所」を話す
材料がある程度たまると、和月さんは担当編集者と黒碕さんと打ち合わせます。
完成した話を伝えるだけではありません。
「こういう案はあるが、ここで迷っている」と口に出すうちに、大まかな筋が見えてくると話しています。
和月さんにとって打ち合わせには、自分の考えを相手に説明し直す役割もあります。
本人は、説明すると理解が深まり、そこからアイデアが浮かぶこともあると言います。
黒碕さんの協力を含む制作体制については、別の記事でも紹介しています。
台詞を脚本のように書き、付箋で場面を動かす
打ち合わせから大まかな筋が見えたら、和月さんは台詞の流れを脚本のように書き出します。
場面ごとに付箋へ分け、順番を入れ替えて試すこともあるそうです。
付箋は、場面の順序を実際に動かして確かめる道具です。
脚本が固まりそうになって、ようやくコマ割りへ進みます。
対談では、どのように話を作るかと、絵としてどう見せるかを別の段階として説明していました。
読者が目にするのはコマに配置された人物と台詞ですが、そこへ至る前に文章と場面の順序を何度も扱っています。

ネームが完成する前に作画が始まることもあった
同じ対談で和月さんは、当時の月ごとの作業についても説明しています。
次の話のネームに取りかかってから約一週間でスタッフが作画に入り、その時点ではネームが完成していないことも多かったそうです。
描ける部分から先に進め、残りのネームは夜に考える。
「すべてを決めてから作画」という一直線の工程ではなかったのです。
ただし、これは対談当時の本人の説明です。
今の全号で同じ日程や作業分担が続いていると示すものではありません。
ここから分かるのは、文章で考え、付箋で検討した後も、制作は完成を待って止まっていたわけではないということです。

まとめ
和月さんのネーム作りは、思いついた絵をそのまま清書する作業ではありません。
頭の中の考えを文章にし、人に説明して曖昧な部分を見つけ、台詞と場面の順序を試してからコマへ移す。
一方で、作画が先に動き出すこともありました。
和月さんが「閃き」を大事にすると話す背景には、何もしないで待つのではなく、考えを外に出して組み替えながら、ひらめきやすい状態を作る仕事があります。

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