鬼頭莫宏の原作漫画とは?『ヨリシロトランク』の分担とネーム

机の上に広げられた鬼頭莫宏の叩きネーム。コマや台詞の紙を貼り、人物や自転車を鉛筆で描いている。 漫画家・作者
鬼頭莫宏が作成した『ヨリシロトランク』の叩きネーム/コミックDAYS編集部の対談掲載。

鬼頭莫宏さんは、自分で漫画を描くほか、『ヨリシロトランク』『能力 主人公補正』では原作を担当しています。
『ヨリシロトランク』は、鬼頭さんがネーム原作を作り、カエデミノルさんが漫画を描く作品です。
二人の対談には、ネームを渡して初めて分かった行き違いと、作画側から加わった演出の話があります。

原作は鬼頭莫宏、漫画は別の作家が担当

『なるたる』『ぼくらの』などの鬼頭作品と違い、この2作品では、鬼頭さん以外の漫画家が作画を担当しています。

作品 原作 漫画
ヨリシロトランク 鬼頭莫宏 カエデミノル
能力 主人公補正 鬼頭莫宏 当麻

『ヨリシロトランク』は、殺人を犯した者を殺すと、その被害者がよみがえるようになった世界を描く漫画です。
娘を取り戻したい父親など、死者を思う人々の物語が重なります。
全3巻で完結しており、第3巻では、同じ新しいルールを別の世界へ適用した物語も描かれます。

『能力 主人公補正』は、平凡な生活を望む高校生・加藤凡が、容姿や才能、周囲の環境を物語の主人公らしく変える能力を得る話です。

余白のあるネームを、どう受け取ったか

机の上に広げられた鬼頭莫宏の叩きネーム。コマや台詞の紙を貼り、人物や自転車を鉛筆で描いている。
鬼頭莫宏が作成した『ヨリシロトランク』の叩きネーム/コミックDAYS編集部の対談掲載。 出典

ネームは、コマや台詞を置いて、漫画の流れを示す下準備の絵です。
2020年の対談で鬼頭さんは、後から内容を足せるよう、空きを残した叩きネームを作っていたと説明しています。

カエデさんは、その空白に入る絵を想像し、鬼頭さんの漫画ならこうなるはずだとメモしていました。
ところが、鬼頭さんは余白を切るつもりでした。
渡っていたのは、まだ修正する叩き台だったのです。

鬼頭さんは一人で描くとき、下描きに入ってから辻褄の合わない箇所や人物の動きに気付き、ネームを変えることが多かったと話します。
最初のネームを粗く作っても、自分が次の段階で直せました。
別の作家へ渡す今回は、そのままでは伝わらず、ある程度作り込んでから渡す必要に気付いたと振り返っています。

作画側の「あやとり」の案が、ネームに戻る

世界が改変される場面も、最初からあやとりに決まっていたわけではありません。
カエデさんは、改変者が脇を鳴らす案や、象やキリンを背景に地球を背負うような絵も考えました。

最後に、巨大な手で世界をぐしゃぐしゃにするイメージから、手と糸によるあやとりの案を鬼頭さんへ送ります。
すると、その案がネームに反映されて戻ってきました。
カエデさんは、絡み合う手と糸を実際に描く大変さにも、冗談交じりに触れています。

物語を渡す鬼頭さんと、受け取って描くだけのカエデさん、という一方向の分担ではありません。
作画側が考えた見せ方が、原作のネームへ戻り、完成した場面に加わっているのです。

まとめ

『ヨリシロトランク』では、原作の鬼頭さんも、物語をコマにする段階から関わっています。
作画側の案がネームに戻る過程を知ると、完成した漫画には、二人の間を行き来した工夫があることも分かります。

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