『るろうに剣心』蒼紫はなぜ四人の弔いに「最強」を求めたのか

四乃森蒼紫が描かれた集英社るろうに剣心完全版第8巻の表紙 るろうに剣心
『るろうに剣心 完全版』第8巻/和月伸宏・集英社

四乃森蒼紫は、亡くなった四人の部下の墓に「最強」の名を添えようとする。
弔う方法が、なぜ剣心を倒すことだったのか。
蒼紫は四人が生きていたころから、御庭番衆の強さを証明したかった。
しかし四人を失った後、その望みは、彼らの墓に捧げる蒼紫自身の誓いに変わっていく。

「最強」は、四人を失う前から蒼紫が求めていた

幕府が終わり、江戸城を守ってきた御庭番衆には戦う場所がなくなった。
蒼紫には仕官の誘いがあったが、般若、式尉、ひょっとこ、癋見にはなかった。
蒼紫は四人と離れず、武田観柳の護衛を引き受ける。

観柳が部下たちを軽んじたとき、蒼紫は御庭番衆を侮るなと強く言い返した。
蒼紫にとって抜刀斎を倒すことは、自分一人の腕を誇るだけの勝負ではない。
幕末に力を示す機会を失った御庭番衆の名を、剣心との勝負で示そうとしていた。

部下を軽んじる観柳へ言い返す蒼紫の原作場面
『るろうに剣心』第22幕/和月伸宏・集英社

四人の死で、勝負が弔いに変わった

観柳邸で剣心に敗れた蒼紫を、四人は観柳の回転式機関砲からかばって死ぬ。
四人を撃ったのは観柳だが、蒼紫が追ったのは剣心だった。
剣心はもともと、蒼紫が御庭番衆の強さを示したかった相手だからだ。
蒼紫はその勝負に敗れ、四人に「最強」の名を渡せないまま彼らを失った。

御庭番衆が蒼紫を守る観柳邸の原作場面
『るろうに剣心』観柳邸の戦い/和月伸宏・集英社

剣心も、深い失意の中にいる蒼紫へ、傷を癒してからもう一度戦おうと告げる。
剣心への再挑戦は、そのときの蒼紫が生きていくための支えにもなった。
蒼紫は四人の墓を前に、「最強」という名の華を手にするまで戦いは終わらないと誓う。
蒼紫が求める勝利は同じでも、その意味は変わっていた。
生前に示せなかった御庭番衆の強さを、今度は死者への贈り物にしようとしたのだ。

四人の墓を前に最強の名を求める蒼紫の原作場面
『るろうに剣心』京都編/和月伸宏・集英社

剣心が問うたのは、四人への思いではなく今の蒼紫の行動

京都で蒼紫は、剣心と再戦するため志々雄一派と手を組む。
剣心の居場所を求めるうちに、かつての仲間である翁に重傷を負わせ、蒼紫を慕う操も拒む。
生きている御庭番衆の仲間を傷つけてまで、死んだ四人へ「最強」を届けようとした。

再戦した剣心は、蒼紫が四人のためではなく、四人のせいにして剣を振るっていると指摘する。
これは蒼紫が四人を大切に思っていなかった、という話ではない。
観柳に部下を侮らせなかった蒼紫の思いは本物だった。
だが蒼紫は、四人を思いながら、同じ御庭番衆の翁を傷つけ、操を突き放している。
剣心の言葉は、弔いの名のもとに続けている戦いが、今は誰の望みなのかを蒼紫に突きつけた。

再び剣心と向き合う蒼紫の原作場面
『るろうに剣心』京都編/和月伸宏・集英社

蒼紫はそれでも、剣心との決着をつけなければ前へ進めないと言い、最後まで戦う。
だが蒼紫は、剣心に敗れても四人を忘れない。
やがて蒼紫は、操たちが待つ側へ戻り、目の前の戦いにも力を貸す。
四人を弔うために「最強」が必要だと信じた蒼紫は、もう一度敗れた後、四人の記憶を抱えたまま生きる道へ進んだ。

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