『地獄先生ぬ~べ~』では、花子さんなどの妖怪が、大きな顔で読者に迫ってきます。
作画の岡野剛さんは、『週刊少年ジャンプ』の中で目を引くよう、線を太くし、怖い絵を大きなコマで見せようとしました。
その工夫につながったのは、前作を掲載誌の中で見つけられなかった経験です。
自分の漫画なのに、目次で確かめるまで見つからなかった
岡野さんの初連載は、1989年に始まったギャグ漫画『AT Lady!』でした。
2025年の本人インタビューによると、掲載された自分の漫画をすぐには見つけられず、目次を見て確かめたことがあったといいます。
当時の岡野さんは細い線で描いていましたが、宮下あきらさんらの太く濃い絵が並ぶ誌面では、自分の絵が埋もれてしまうと感じました。

そこで『ジャンプ』で描くなら、勢いのある太い線にし、ペンの強弱もはっきりつけようと考えます。
それまでの緻密な下描きから、描き方を変えていったのです。
読切でも試した、線の強弱と大ゴマ
『ぬ~べ~』の前身である読切『地獄先生ぬ~ぼ~』でも、岡野さんは画面の見せ方を試しています。
増刊版は描き込みが多く、当時の紙や印刷の影響もあって、ページが黒くなってしまったと振り返りました。
本誌の読切へ進む間には、コマの数が減り、決める場面の線も太くなっています。
小さなコマでは、絵そのものも目立ちません。
岡野さんは、怖い妖怪や魅力的な人物を大きく見せることで、読者の目を引こうとしました。
連載第1話の見開き扉でも、ぬ~べ~と生徒たちが大きく描かれています。

花子さんは、ページいっぱいの顔で驚かせる
怖い絵を大きくする理由は、原作の真倉翔さんの説明にも表れています。
吉田悠軌さんの『よみがえる「学校の怪談」』に収められた三人の鼎談の公開部分で、真倉さんは、ぬ~べ~が子供たちを助ける物語で、どこに恐怖を置くかを話しました。
最後に助かる話でも、妖怪が現れる瞬間には、ページを大きく使って読者を驚かせられます。

第9話の花子さんは、目を見開き、口を大きく開いて迫ります。
鼎談の続きで、吉田さんは、この登場場面を読んだとき、雑誌を閉じてしまうほど怖かったと語っています。
本誌は単行本よりも大きく、その判型も、登場する顔の迫力につながったと振り返りました。
大きく描くために、ネームの配分も変えた
岡野さんが変えたのは、線の太さだけではありません。
真倉さんのネームを受け取った後で、コマの大きさも組み直していました。
ゆきめの初登場では、ネームで3段ほどだった場面を1ページへ広げ、その分、後の内容を整理しています。
人物の頭身が二人で違うため、小さいコマでは岡野さんの描く顔が小さくなってしまう、という事情もありました。

こうしたネームから原稿になるまでの分担を見ると、作画の段階でも、どの場面にページを使うかを決め直していたことが分かります。
怖がらせる場面も、ゆきめを見せる場面も、岡野さんはページの中でどれだけ大きく描くかを考えていたのです。
まとめ
自分の漫画が誌面に埋もれた経験から、岡野さんは、読者の目を引く線と大きさを探しました。
花子さんの登場で雑誌を閉じたという吉田さんの話は、その大きな絵が、読者にはどんな体験になったのかを伝えています。
『ぬ~べ~』の怖さには、妖怪の姿とともに、ページを開いた瞬間の見せ方があるのです。


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