『るろうに剣心』志々雄は十本刀をどう束ね、なぜ力を生かしきれなかったのか

志々雄真実を背後にした剣心と薫が描かれた単行本第18巻の表紙 るろうに剣心
『るろうに剣心』第18巻表紙/和月伸宏・集英社

方治は葵屋を襲う策を志々雄に進言し、怒りを買った。
それでも志々雄は方治の策を採り入れる。
十本刀を動かしたのは、「弱肉強食」に従わせる恐怖だけではない。
ところが、葵屋を襲った十本刀は集団として力を生かし切れなかった。
人を束ねるのがうまい志々雄の組織に、なぜその弱さがあったのか。

十本刀は、同じ理由で志々雄のもとにいたのか

幼い宗次郎は、身を寄せた家で虐げられていた。
宗次郎に志々雄が教えた「弱肉強食」は、遠い国の政治を語る言葉ではなく、宗次郎が置かれた境遇に直接触れる言葉だった。
志々雄は宗次郎に刀を渡し、その強さを認めている。

弱肉強食を語る志々雄真実の原作コマ
『るろうに剣心』京都編/和月伸宏・集英社
志々雄の十本刀である宗次郎が剣心と戦う原作場面
『るろうに剣心』京都編/和月伸宏・集英社

一方、元官吏の方治は明治政府に失望し、志々雄一派の実務を担う。
方治には宗次郎のような剣の強さではなく、組織を動かす知識と判断がある。
安慈もまた、失った子供たちへの思いと「救世」への願いを抱えている。
三人の事情を比べると、十本刀を「同じ信条を持つ十人」とは呼べない。
志々雄は異なる力を持つ者を集め、自分の国盗りの中で役割を与えていた。

方治の進言に見える、志々雄の統率

甲鉄艦「煉獄」を失った後、方治は剣心たちをアジトで迎え撃つだけでなく、別働隊を葵屋へ向かわせる策を進言する。
志々雄は、自分に意見した方治を咎めた。
それでも方治は、志々雄に完全な勝利をもたらすためなら、仲間から嫌われる手段も引き受けると訴える。

作戦への進言をした方治を志々雄が咎める原作コマ
『るろうに剣心』京都編/和月伸宏・集英社
周囲から嫌われても志々雄の勝利を望む方治の原作コマ
『るろうに剣心』京都編/和月伸宏・集英社

志々雄は方治の提案を採り入れ、以後の汚れ役を方治に任せる。
方治は志々雄に逆らって主導権を奪ったのではない。
志々雄に勝たせたいからこそ、志々雄が好まない策を進言した。
志々雄は威圧によって上下関係を示しつつ、方治にしかできない仕事を渡している。
この場面には、強い剣客だけを従わせるのとは違う、志々雄の統率が見える。

葵屋では、集まった力をどう使ったか

方治の策で、宗次郎、宇水、安慈はアジトに残り、ほかの十本刀が葵屋へ向かう。
戦力を分けて同時に動かした以上、十本刀に協力がまったくなかったわけではない。
ただ、葵屋での戦いに目を移すと、蝙也は弥彦と、鎌足は薫と操と、夷腕坊は御庭番衆と、それぞれ対する。
薫と操が一人の鎌足に力を合わせたのとは、対照的な戦い方になった。

葵屋で十本刀の蝙也と弥彦が戦う原作場面
『るろうに剣心』京都編/和月伸宏・集英社
葵屋で薫と操が十本刀の鎌足に向かう原作場面
『るろうに剣心』京都編/和月伸宏・集英社

才槌と不二のように二人で動く者もいる。
十本刀が常に一対一しか選べなかった、と言うのは正しくない。
また、比古清十郎の到着もあり、敗因を連携不足一つに決めることはできない。
それでも葵屋では、十本刀が互いの苦戦を補って押し返す姿は見えにくい。
方治が作戦を立て、志々雄がそれを採用する連携はあった。
その連携は、葵屋で戦う十本刀が互いを助け合うところまで及んでいない。

十本刀の不二と比古清十郎が戦う原作場面
『るろうに剣心』京都編/和月伸宏・集英社

志々雄が束ねたもの

志々雄は、十本刀を同じ考えの者に変えて従わせたのではない。
宗次郎の剣、方治の知略、安慈の強さを、それぞれ自分の国盗りへ結びつけた。
方治の進言を受け入れた場面には、力ずくの命令だけでは説明できない統率がある。
一方、葵屋の攻防では、個々の強さがそのまま仲間との連携にはならなかった。
方治が志々雄へ意見できたことは、十本刀の強みだった。
一方で、その作戦を実行する仲間同士が力を合わせられるかは別だった。
志々雄は一人ずつの力を使うことには長けていたが、その力を戦場で一つにするところに、十本刀の限界があった。

この記事もおすすめ

コメント

アクセス解析について
タイトルとURLをコピーしました