藤本タツキさんと沙村広明さんの対談は、2017年の『ファイアパンチ』第5巻発売を記念して公開されました。
藤本さんが憧れの作家へ絵の描き方を尋ね、沙村さんは、月刊と週刊の制作条件の違いも踏まえて答えています。
少年ジャンプ+の公式ページでは、全5ページの対談を読めます。
そこには、沙村さんも藤本さんの漫画を買って読んでいたことや、二人で絵を作る過程も載っています。

憧れの沙村広明も、『ファイアパンチ』を集めていた
藤本さんは、学生の頃から沙村さんの漫画を読んでいたと話します。
対談が決まると、沙村さんが夢に二度出てきたほどでした。
沙村さんは、それ以前から『ファイアパンチ』を読んでいました。
ネットで第1話を見て面白いと思い、第1巻を買ってアシスタントに読ませ、自分でも読んで、単行本を集めていたそうです。
沙村さんが好きだと挙げたのは、先がどうなるか分からない展開でした。
藤本さんは、話の着地点がすぐには見えない韓国映画のような漫画を描きたかった、と応じています。
好きな作家が自分の作品を読んでいた驚きから、対談は、互いにどんな漫画を面白いと思うかという話へ進みます。

藤本タツキが知りたかった、人物を生きて見せる描き方
藤本さんは、沙村さんのように絵が上手くなりたいと、繰り返し尋ねます。
漫画表現について話すページでは、人物の仕草や生活感も話題になっています。
沙村さんは、人物の特徴は語尾だけでなく、仕草や、同じ質問をしたときの返事の傾向にも出ると話します。
藤本さんは、こうの史代さんが描く足や、コントで役者が見せる仕草を例に、人物の実在感を話しています。
藤本さんは、群衆の人物も演技させたいのに、時間がなく棒立ちにしてしまうと話しました。
沙村さんは、アシスタントに自然な姿勢で下描きをしてもらい、その絵を直しながら自分でペンを入れる方法を説明しました。
細かな理想の話から、締め切りの中でどう作業するかまで、助言が具体的になっています。

月刊と週刊の違いを、沙村広明が助言に添えた
沙村さんは、対談の最初から、自分の経験は月刊誌でのもので、週刊で仕事をする藤本さんへ伝えられることは少ない、と話しています。
絵について尋ねる後輩を前にして、二人の仕事の条件を先に示していたのです。
最後のページでは、藤本さんが、構図に凝る時間がなく、雪や吐く息まで描き込めないことを打ち明けています。
沙村さんは、できなかった悔しさを覚えていれば、次の作品で絵が変わっていく、と励ましました。
そのうえで沙村さんは、その日語ったこだわりも、時間があってこそ考えられるものだと付け加えています。
自分も一週間で一本を仕上げるなら、同じようには考えられないという説明でした。
沙村さんは、画力を伸ばした美術予備校の経験や、大友克洋に似た手癖を変えた道具選びも話しています。
自分の経験を伝えるときにも、沙村さんは、月刊での作業と、一週間で仕上げる作業の違いを示していました。
万次とアグニを交換して描いた共同イラスト
対談では、万次を藤本さんが、アグニを沙村さんが描いています。
二人で構図を決めて沙村さんがラフを描き、藤本さんは、そのラフを取り込んでデジタルで万次を作画しました。

沙村さんは、アグニにピグマのミリペンや筆ペン、白いボールペンを使っています。
完成画は、藤本さんが合成し、万次の左手の刀がアグニに食い込むように加筆しました。
同じ構図の中へ、デジタルで描いた万次と、ペンや筆ペンで描いたアグニが合わされています。
まとめ
沙村さんは、自分の描き方を紹介しながら、一週間で漫画を仕上げるなら、同じようには考えられないとも話しました。
憧れの絵をどう描くか、という藤本さんの問いへ、沙村さんは、制作に使える時間の話も返しています。
二人のやり取りから、絵のこだわりを、締め切りのある仕事の中でどう実現するかまで考えられる対談です。

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